第27.8話 シラヌイの不満
佳賀里財閥の使用人であるシラヌイは屋敷での仕事はツムギの身の回りの世話だった。
使用人の仕事を初めてすでに一年の月日が過ぎている。十四歳のシラヌイは義務教育の中学校には行っていたが数日通ってからすでに登校拒否となっていた。
ヨーロッパ出身のシラヌイからすると日本の中学生は幼稚過ぎた。話もノリも全く噛み合わない。外国人であり、年齢の割に大人びているシラヌイに対して距離を置かれるのも不快だった。
勉強のレベルも高くはないので行く価値がないと判断していた。
佳賀里ツムギの部屋へ向かっている途中でスマホの着信が鳴る。確認しなくても誰なのか分かりきっていた。面倒くさいので着信拒否しようと考えるが仕方なく対応する。
「何? いちいち連絡しなくても報告書は送っているでしょう? 使用人の仕事の邪魔をしないで」
シラヌイは最近になってメイド姿に違和感が抜けてきた。最初は絶対に嫌だったが仕事なので仕方がないと割り切っていたが人間とは不思議なモノで慣れると恥ずかしさが無くなる。
「例の人物はちゃんと調べている」
数分間、誰かと話していたシラヌイは眉間に皺を寄せて徐々に苛立ちを募らせる。
通話が終わると舌打ちをしながらスマホを床に投げ捨て足のかかとでスマホの画面を割った。そして歩き出そうとすると背後から声を掛けられる。
「お気持ちは分かりますが物に当たるのはどうかと思いますよ? これで何台目ですか?」
背後に立っていたのは使用人である海馬だった。相変わらず背筋を伸ばして品格を備えている。
「うるさい。それと評議会の連中に私に連絡するなって脅しといて。あいつらの声を聞くだけで腹が立つ。全員早く死ねばいいのに」
「評議会の皆様は神に選ばれた使者ですよ? シラヌイ様は少し我慢を覚えた方がよろしいかと存じますが?」
「海場に言われなくても分かっているわよ。それと例の件はどうなった?」
「順調に事を運んでおります。やはり間違いないと……不可解な行動が目に付きます」
「未来を汲み取る選ばれた人間。力を行使すれば災厄が訪れる。……はぁ……面倒くさい。海馬。悟られては困るから対象との接触は必要最低限にしなさいよ。クズ異端者達の情報もこまめに報告しなさい」
「承知いたしました」
「じゃあ私は臆病なお嬢様のお世話に行ってくるわ」
「たしかツムギお嬢様は懇意にしている配信者のコラボを楽しみにしているようですね」
「らしいわね。その配信者があいつの妹だって知ったら驚くでしょうけど……言えないから面白くないわ。ツムギの間の抜けた顔を見たい所だけど仕方がないわね」
「随分ツムギお嬢様を気に入っているようですね?」
「そう? 私はツムギなんて大嫌いだけど?」
「シラヌイ様らしい切り返しです」
「何で笑っているのよ……ケンカ売ってる?」
「いえいえ。では使用人のお仕事に尽力して下さいませ」
シラヌイは舌打ちしてから丁寧にお辞儀する海馬を残して大股で歩き出した。




