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未来が視えても妹は救えないッ!?  作者: 竜宮


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第27話 あんたは奇跡の価値が分からないの!?

 湿気で肌がべとついて気持ちが悪い。

 雨の音を聞きながらテストに向かう。今日は中間試験二日目で教科は英語と歴史だった。前日に問題は視えていたので淀みなく問題を回答する。学年主席にならないように少しだけ間違うのも忘れてはいない。これ以上に悪目立ちはごめんだ。

 俺は絶賛嫌がらせをされている最中だった。もちろん誰も助けてはくれない。むしろ俺が困っているのが面白いのかクラスメイトの何人かは楽しんでいるようだった。自ら手を汚さずに傍観者を気取っている。あまり愉快ではない。

 嫌がらせの中身は俺の机だけが無くなっていたり、帰る間際に靴を盗まれたりと陰険な嫌がらせを受けている。小学生のイジメレベルなのだが迷惑には変わりない。

 犯人は誰なのか分かっているので問い詰めてもいいのだが証拠が無ければ開き直られる可能性がある。事前に未来が視ているので慌てはしないのが救いではあった。

 狙い通り佳賀里への嫌がらせが俺に移っている。俺が嫌がらせを受けている間、佳賀里への攻撃は止んでいた。狙い通りではあるがこのままでは何も解決はされない。ただ単に標的が佳賀里から俺に移っただけだ。時間が経てば嫌がらせの矛先が佳賀里に向かうだろう。

 何とかしなければならない。鍵を握るのは佳賀里の父親しかいないだろう。


「あんた大丈夫なの?」


 テストが終わり帰宅する準備をしていると佳賀里が心配そうに尋ねてきた。


「大丈夫だ。テストはばっちりだと思う」


 友達になると決めたので無視をせずに普通に会話を返す。

 他のクラスメイトは俺と佳賀里が話している内容に対して聞き耳を立てていた。嫌われ者一号と二号が会話をしているのに対して驚いているようだった。


「違うわよ……昨日あんたの机が無くなっていたでしょ……もしかしてイジメられている……とか?」


「あーそっちか。京寺先生が余っている机を用意してくれたから問題ないだろ。むしろ前の机より座りやすくて助かっている」


「そういう意味じゃないわよ」


「とにかく何も問題はない。じゃあ俺は帰るからまた明日な」


 佳賀里を置いて教室を出ると下駄箱へと向かう。

 すると俺の持ってきた黒い傘がぼろぼろに切り刻まれていた。手に取って開いてみるが傘の原型が無くなっていた。ほとんど持ち手の部分しか残ってはいない。

 慌てない俺は吐息を付きながら鞄に忍ばせていた折りたたみの傘を広げた。下校を共にする弥生のクラスはもう一科目テストがあるので帰る時間は違っていた。

 弥生に傘の残酷な姿を見られてしまうと発狂されるだろう。一緒じゃなくて良かったと少しだけ思ってしまう。弥生には心配を掛けたくはなかった。

 自宅に帰ると求人広告を机に広げた。高校生でも雇ってくれる求人は少ない。あったとしても自宅から遠い所が多かった。交通費をあまりかけたくない俺はバイト先を近場で探すつもりだった。もちろん俺の目つきの悪さからして選り好みは出来ないのが現実ではある。接客業のバイトに採用される自信はまるで無かった。

 俺が新しいバイトを探しいている理由は倉庫の仕事をクビにされたからだった。

 昨日いきなりバイト先から連絡があり、もう来なくていい、と言われた。佳賀里の母親が手を回したのを知っていたので俺はクビになった理由を聞きもしなかった。聞いた所でいい加減な理由を伝えられるだけだと理解している。時間の無駄であるのは明白だ。


「ちょっといい?」


 求人広告を睨んでいた俺はディスプレイに移るメイメイちゃんに瞬時に反応する。

 しばらく口を聞いてくれなかった愛依が久しぶりに話し掛けてくれたのだ。反応しない方がどうかしている。

 何だか久しぶりに愛依の声を聞いた気がする。俺と変な感じになってから愛依は配信を止めていたのだ。

 嬉しくて頬が緩む。しかし俺は表情筋を強張らせて真顔を無理やり作った。落ち着け。変な反応するとまた喋ってくれなくなる可能性もある。ここは普段通りに対応するのがベスト。自然な感じで対応するべし。


「どッ……どうひた?」


 不自然に甘噛みしてしまう。俺は咄嗟に自分の両頬をつねった。顔を強張らせていた弊害だった。


「……あのさ、大事件が起こったんだけど……言っていい?」


「大事件?」


 大事件って何だ? もしかして愛依の体調が悪いのか? だからずっと話してくれなかったのか?

 少し舞い上がっていた俺は愛依が心配になり急に不安になった。


「アリサちゃんから連絡が来たのよ」


「アリサ? アリサって誰?」


「有名配信者のアリサちゃんよ! 登録者は十万人を超えている超人気者のアリサちゃんッ! 私の憧れのアリサちゃんッ!? 可愛い声で世の男子を虜にする小悪魔アリサちゃんよッ!」


 愛依は興奮しているが俺はアリサという人は知らない。テレビの有名人もあまり知らない俺にネットの有名人の名前を言われても困惑するだけだった。連絡が来たことが凄いのか凄くないのかもピンとこない。

 ただ、愛依が興奮しているので俺と喋るのに抵抗が無くなっている。仲直りのきっかけを作ってくれたアリサちゃんありがとう。俺は心で誰かも知らない相手に感謝した。


「それで……アリサちゃんが愛依に何の用なんだ?」


「コラボ生配信しようかって誘われたのよッ! やばくないッ!? これは奇跡よッ! 私の占いコーナーが面白いって言ってくれたのよッ! まさかアリサちゃんが私なんかの配信を見てくれていたなんて……感激すぎる……」


「そうなのか。良かったな」


「何で驚かないの!? あんたは奇跡の価値が分からないの!?」


「奇跡の価値は知らん。とにかく良かったじゃないか。それでコラボ生配信ってやつはいつやるんだ?」


「今日よ。もちろん占いコーナーでコラボするから」


「ちょっと待て。愛依の手伝いをしたい気持ちはあるけどさすがに明日のテスト勉強をさせてくれ」


「勉強なんて明日すればいいじゃない」


「いやいや。明日がテストだっての!」


「じゃあお願い。私は生配信の準備で忙しいから……」


「おい! ちょっと待て! こら!?」


 その後、いくら話し掛けても愛依からの返事はなかった。

 愛依は俺の性格をよく知っている。これだけ理不尽な約束をされたとしても俺には愛依の為なら手伝わないという選択肢はない。

 諦めた俺は求人広告を投げ出して急いで明日のテスト勉強を始めた。

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