第21.5話 愛依と洗濯機
兄である彩芽が家に居ない隙に愛依は洗面台で戦っていた。
自分の服を洗濯機に入れたのだが、洗剤の種類に迷っていた。粉の選択洗剤や複数の液体の洗剤の量がイマイチ分かっていない。柔軟剤は必ず入れろと彩芽が書いたメモに書いてあるがどれを入れるか分からない。とりあえずいい匂いの柔軟剤らしき洗剤を入れるとメモに書かれた通りにスイッチを押した。
洗濯機が回り出すとすぐに自分の部屋へ駈け込んで額の汗を拭く動作をする。
「ふぃー。あとは待つだけだよね」
愛依はパソコンに向かうとネットサーフィンを開始する。そして検索の欄に兄と仲直りの方法と入力してエンターキーを押す。
ここ数日間、兄の彩芽と変な空気になっていた。
帰宅が遅い彩芽を心配していた愛依は何と彩芽に抱きついてしまった。心配しすぎて不安になっていたのは事実ではある。しかし、彩芽に頭を撫でられた時に愛依は咄嗟に思い出したのだ。
シャワーを浴びていない、と。
前日寝落ちしていた愛依は丸一日シャワーを浴びていなかった。もちろん外出しないので問題はないのだがその日は彩芽に髪を触られてしまった。
咄嗟に触らないでと叫んで彩芽の顎に頭突きしてしまい気絶させてしまった。
汚い妹だと思われたかも知れない。臭かったかも知れない。幻滅されたかも知れないと色々考えると彩芽と話し掛け辛くなってしまった。
愛依は彩芽に汚い奴だなと言われると泣く自信があった。
「どうしよう……お兄ちゃんとこのまま話さないなんて嫌だよー……」
部屋着の青いジャージ姿の愛依は机におでこを付ける。するとスマホからダイレクトメールの通知音が鳴る。
登録者の人かなと考えながらスマホの画面を眺めると愛依は勢いよく立ち上がった。
「これは事件! 事件だよッ!」
興奮した愛依は両腕をばたばたと動かして洗濯機に洗われている衣類の様に部屋をぐるぐると迂回した。




