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未来が視えても妹は救えないッ!?  作者: 竜宮


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第20話 店内限定でカップルになってくれ

 俺の何が悪かったのだろうか。交差点で行き交う人達を眺めながら俺は頭を抱えた。

 弥生の買い物に付き合う為に商店街に出向いていたのだが、愛依の事で頭がいっぱいだった。何が悪かったのか答えが分からずにもがいている。

 愛依に抱き着かれてから全く喋ってくれなくなったのだ。

 相変わらずキャラクターのメイメイちゃんはパソコンの画面に映ってはいる。しかしメイメイちゃんに話し掛けても愛依から返答はない。倒れているのかと心配したがきちんとスマホにメッセージが届いている。

 愛依の部屋に聞き耳を立てるとゲームの音が聞こえたので生きているのは確認した。妹の部屋に聞き耳を立てるのは家族マナー違反だが我が家は特殊なので仕方がない。引きこもりの妹が倒れていても部屋に頑丈な鍵が掛かっているのですぐに発見できないのだ。

 別に俺は愛依の生活音を聞く趣味はない。いや、そんなどうでもいい事を考えている場合ではないな。

 もしかして頭を触ったのがいけなかったのか? でも愛依も俺に抱き着いていたよな? やっぱり連絡をせずに遅く帰ったから怒っているのだろうか? あー、分からない。


「彩芽君お待たせ。もしかして待たせた?」


 弥生が初夏に相応しい白いワンピース姿で現れた。少し茶色の髪はいつものポニーテールではなく複雑に編んでいた。オシャレで可愛らしい髪型なのだが俺は編むのに時間が掛かっただろうなと余計な事を考えてしまう。

 学校帰りに待ち合わせた俺達は制服から私服に着替えていた。俺は黒のジャケットにジーンズと特徴のない普通の恰好をしている。


「待っていないから大丈夫だ。それよりも何でこんな人混みで待ち合わせなんだ? 俺と弥生の家は隣なんだから家の前で待ち合わせでも良かっただろ?」


 正直、人混みは苦手だ。人の顔を見ると余計な未来が視える可能性がある。俺は人混みに入ると地面ばかり見るのが癖になっていた。


「たまには違う場所で待ち合わせしたかったの……迷惑だった?」


「迷惑だったと聞く奴が何で満面の笑みなんだよ……もちろん迷惑じゃないけども」


「じゃあ行こう。彩芽君はここに来るのは久しぶりでしょ? 買い物は後回しにして少し歩こう」


 腕を引かれた俺は弥生に手を引かれて歩き出した。

 商店街は流行りのファッションを扱った店や飲食店が立ち並んでいる。周りは若者ばかりで他校の制服の学生も多かった。

 久しぶりに来たが新しい店が増えていて少し新鮮だった。服を買うのは一年に二度くらいしかない俺にとってこの商店街に足を運ぶ理由はない。

 弥生は久しぶりに楽しんでいるようで買いもしない服を試着したりしていた。弥生が楽しいのなら俺としては問題ない。愛依のことは一旦忘れて俺も弥生も楽しんだ。

 しばらく歩いた所で弥生がコーヒーを飲もうと言い出した。

 俺は財布の中身を確認せずに断った。オシャレな店内のコーヒーは高いのだ。スーパーなら一リットル百円なのに少しの量で五百円を超える。貧乏な俺が手を出せない高級品だ。

 フラペチーノやらラテやらエスプレッソは俺にはまだ早い。

 無料の水道水で十分に生きられる。日本の水道水を舐めるな。


「彩芽君の分は私がおごるよ。それでもダメかな?」


「はぁ……そういうのは止めろって言っただろ? 俺は貧乏だけど友達にたかるつもりはない」


「ごめん」


 残念そうな弥生を見ると心が揺れる。せっかく商店街に来たのに貧乏性を発症させる自分も情けなく思ってしまった。ここで意固地になってしまえば弥生のテンションが下がってしまうだろう。せっかく楽しそうだったのに可哀そうだ。

 俺はガラスの奥を見ると店内はカップルだらけだった。若い男女が楽しそうに会話をしている。俺は場違いな店だと直感した。この鋭敏な感覚は間違いないだろう。

 すると店内のカウンター横の置き看板が目に留まった。

 看板にはカップル限定でオススメ商品が半額だと書かれている。俺はさらに目を凝らしてオススメ商品の値段を確認する。瞬時に計算が終わると「許容範囲か」と自然と呟いてしまった。


「よし。じゃあ弥生の希望通りにこの店に入ろう」


「いいの? お金は大丈夫?」


「しかし条件がある」


「条件?」


「期間限定――いやッ! 店内限定で俺とカップルになってくれ!」


「はへッ!?」


「恥ずかしいのは分かるけど辛抱してくれ。半額の魔力は羞恥心すら吹き飛ばす」


 弥生には申し訳ないけど仕方がない。カウンターでカップルだと言うだけで半額なのだ。飲み物さえ受け取ってしまえばこちらのものだ。幸い港高校の制服を着た人はいない。今のうちにさっさと注文を済ませるべきだ。迷っている暇はない。

 俺は今月の生活費を再計算しながら弥生の手を引いて店に入ったのだった。

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