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未来が視えても妹は救えないッ!?  作者: 竜宮


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第9話 涙を枯らせないように努力します

 弥生の自宅の玄関に入らせてもらうと甘い香りが漂ってきた。匂いの元を探るとおしゃれな芳香剤を見つけた。さすがは弥生のお母さんだ。良いセンスをしている。

 若々しい弥生の母親は美人だと評判だった。自分磨きも頑張っているらしくジムやランニングに出掛けているらしい。小さい頃からの付き合いで俺にも優しくしてくれている。しかし弥生の父親は俺の家族を良く思っていない。市役所勤務のお偉いさんだからという訳ではないが、俺達みたいな庶民以下の人間と娘が友達なのは面白くないのだろう。

 だから俺は弥生の家を訪ねる事はほとんど無くなっていた。一応は気を使っているつもりではある。しかし今回はさすがに顔を合わせて謝った方が良いと考えて家を尋ねていた。


「弥生ちゃーん。彩芽君が久しぶりに遊びに来たわよー。ほら彩芽君も遠慮せずに上がっていいのよー」


 弥生の母親が声を上げると弥生が玄関に現れた。そして「彩芽君の馬鹿」と言って去って行った。本当に徹底している。あまりの仕事振りに拍手を送りたい気分だ。

 部屋に戻った弥生は部屋着ではなく長袖の白いワンピース姿だった。黒いベルトもしっかり腰に巻いている。オシャレをしているという事はもしかして出掛ける前だったのか?


「えー何―? どうしたのー? もしかして喧嘩してるの!? 凄―い!?」


 弥生が姿を消した瞬間に弥生の母親が興奮を爆発させた。主婦の究極奥義である他人のいざこざ大好きが発動したようだ。いや、さすがに偏見か。全国の主婦の皆さんごめんなさい。


「色々ありまして……」


「ねぇねぇ! 何があったの!? 二人がケンカするなんて初めてじゃなーい!? 最近弥生ちゃんの様子がおかしいと思ってたのよー! キャー青春真っ盛りー!」


 弥生の母親が俺の腕に抱きついてくる。豊満な胸を押し付けられてしまった。さすがにこの状況を弥生に見られるのはまずいので俺はすぐに弥生の母親を引きはがした。昔から俺に対して過剰なコミュニケーションを取ってくるのは何とかして欲しい。

 すると弥生の母親に卑猥な予想を立てられる未来が視えた。

 このままでは危険だと察した俺は「少しだけお邪魔しますね」と逃げるように弥生の部屋へ向かった。

 そして何とか部屋に入れてもらうと弥生の部屋に緊張しながら正座する。

 数年振りに入った弥生の部屋は相変わらずごちゃごちゃしていた。壁には大きなアニメのポスター。棚の上には露出の多いフィギアが並べている。ピンクのベッドには大量のぬいぐるみが転がっていた。弥生は昔からアニメが大好きだ。俺はアニメの事は詳しくないので分からない。弥生は俺や母親以外にはアニメ好きだとは秘密にしている状況だった。


「本当にすみませんでした。そろそろ機嫌を直して下さいお願い致します」


「彩芽君の馬鹿」


 ベッドに腰かけた弥生はぬいぐるみを抱きしめながらそっぽを向いた。

 勢いよくポニーテールが揺れるのを眺めた後で俺は再び額をカーペットに付ける。


「俺に関わるなって言ったのは別に友達を止める意味ではないのです。学校では関わらない方が弥生の為だと思って言ったまでなのです。学校以外ではこれまで通りに仲良くさせてもらうつもりでした。弥生は大事な幼馴染ですので」


 するとしばらく沈黙した後で弥生が小さく呟く。


「……勝手に決めつけないで欲しい」


「え……?」


「私の事が嫌いになったのかと思った……すごく傷付いた……」


「本当にすみませんでした!」


 頬を膨らませた弥生は俺を睨みつけてくる。童顔なので迫力は全くない。

 張り詰めた空気が流れる。誠心誠意を込めて謝っているのだが許してくれるかどうかは分からない。弥生の未来は俺には視えない。こんな時に限って未来が視えたら助かるのにと考えてしまった。未来が視えれば許してもらえる選択肢を選ぶことが出来るのだ。


「……分かった。許してあげる」


「ありがとう」


「でも次は無いからね」


「分かっています」


「次は絶対に泣くから。涙枯らすからね」


 泣くと宣言した弥生はすでに涙目だった。ずっと俺との関係を気にしていたようだ。

 弥生には悪い事をした。改めて反省だ。


「涙を枯らさせないように努力します」


 何とか弥生と仲直り出来た。そして弥生も変な関係がずっと嫌だったと打ち明けてくれた。元はと言えば俺の勝手な考えが原因だ。これからは気を付けないと。自分が正しいと思っていたことも相手に取っては迷惑な事がある。俺は忘れないように自分の教訓に加えておいた。

 その後、母さんの墓参りに向かうと弥生に伝えると一緒に着いて来てくれた。

 初めから俺と一緒に墓参りに行くように準備だけは済ませていたようだ。弥生の行動を知って俺より未来が視えているのではないかと笑えてきた。

 さすがは弥生だ。俺の事をよく分かっている。

 そして母さんの墓に辿り着くと俺と弥生は驚いてしまった。なんせ墓を埋め尽くす程の赤いバラが飾られていたからだ。墓が並ぶ場所に似つかわしくない程に華やかだった。

 相変わらず父さんは破天荒な人だ。どうやら母さんの為に大量の赤いバラを買ったらからお金が無くなったのだろう。本当に計画性のない大人だ。

 でも父さんらしくて悪くない。

 父さんの愛情の深さに苦笑しながら弥生と二人で手を合わせて祈りを捧げた。

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