↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
32/42

第32話:流星の剣、見参


暗殺者たちの刃が、月光を反射して不気味に煌めいた。

リーダー格の男の合図と共に、十数人の黒い影が一斉に『流星の剣』へと襲いかかる。彼らは、魂を喰らう魔道具によって身体能力を底上げされており、一人一人がCランク冒険者を凌駕するほどの力を秘めていた。

だが、カイン、ゴードン、リーシャの三人は、その程度の数と力に怯むほど、やわな冒険者ではなかった。

「させっかよ!」

真っ先に動いたのはゴードンさんだった。彼は、三人の暗殺者が同時に放った斬撃の前に、自慢の巨大な斧ではなく、あの日の「お守りの盾」を構えて立ちはだかった。

ガキン! ガギンッ!

甲高い金属音が連続して響き渡る。魔道具で強化された刃が、いとも容易く、その小さな盾に弾き返されたのだ。

「なっ……!?」

驚愕する暗殺者たち。しかし、ゴードンさんにとって、この盾はただの防具ではない。仲間が信じてくれた、彼の覚悟の象徴だ。

「俺の判断は、間違ってねえ!」

咆哮と共に、彼は盾で弾いた体勢の崩れた暗殺者の一人に、渾身の力で斧を叩きつける。凄まじい衝撃音が闘技場に響き、黒い影がくの字に折れ曲がって吹き飛んだ。

ゴードンさんが強固な壁となって敵の突撃を止めた、その瞬間。

リーシャさんの矢が、闇夜を切り裂く。

彼女の瞳には、もはや過去のトラウマに怯える色はなかった。ただ、仲間を守るという強い意志と、未来を射抜くための冷静な光だけが宿っている。

矢は、ゴードンさんを囲もうとしていた別の暗殺者の、鎧のわずかな隙間――関節部分を、寸分の狂いもなく射抜いた。

「ぐっ……!」

悲鳴を上げて膝をつく暗殺者。リーシャさんの放つ矢は、敵を殺すためではない。その動きを止め、無力化するためだけの、精密無比な一射だった。

そして、仲間たちが作り出した活路を、一筋の流星が駆け抜ける。

「――そこだ」

カインさんの剣が、夜の闇に銀色の軌跡を描いた。

魔道具によって思考を読みにくいとはいえ、強化された肉体の動きは単調になりがちだ。彼は長年の経験と、ルシアーナと繋がることで研ぎ澄まされた直感を頼りに、敵の動きの「先」を読んでいた。

暗殺者たちが剣を振りかぶるより速く、懐に潜り込む。彼らが防御の体勢を取るより速く、剣の峯で急所を打ち据え、戦闘能力を奪っていく。その動きは、まるで水が流れるように自然で、一切の無駄がない。

「馬鹿な……! たかが辺境の冒険者に、我ら『影』が、こうも容易く……!」

リーダー格の暗殺者が、信じられないといった様子で叫ぶ。彼らにとって、これは簡単な暗殺任務のはずだった。彼らは知らない。目の前にいるパーティーが、それぞれが抱える絶望の淵から這い上がり、本物の絆で結ばれているということを。

トラウマを乗り越えたゴードンさんの揺るぎない「盾」。

過去の贖罪から、未来を守る祈りへと昇華されたリーシャさんの「矢」。

そして、仲間を守るという決意を固めたカインさんの、全てを切り裂く「剣」。

その戦いぶりは、まさしく『流星の剣』の名にふさわしい、完璧な連携だった。

一方、その背後で、私は一人、暴走するミリアと向き合っていた。

「うぅ……ああ……やめて……!」

彼女は黒い瘴気を身にまとい、ただ苦しげにうめいている。魔道具の力が、彼女の精神を内側から食い荒らそうとしている。

このままでは、彼女の魂が完全に喰われてしまう。

助けなければ。たとえ、彼女が私を陥れた相手だとしても。

「ミリアさん!」

私は、仲間たちが作ってくれた時間を信じ、危険を顧みず、黒い瘴気が渦巻く彼女の元へと、一歩、また一歩と近づいていった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。