29 出会い
それは、レアには信じられない光景でした。
あの少女が塗った薬、少ししたら女性の傷が綺麗に塞がって治っていました。
あれは、人間界では存在しないはずの霊薬。
それを、あんな子供が持っているなんて・・・。
「大量の血が流れちゃったからフラフラするだろうけど、これでもう大丈夫!しばらく安静にして、たくさん食べてれば元気になるからっ!」
彼女はそう言って、みんなの前から何事もなかったかのように消えていった。
そして、今はレアの前を歩いている。
どうしてかなぁ。なんか、死神さんを元に戻すにはこの子についていったほうがいい!、って、そんな予感がしてるんだよね。
鼻歌を歌いながら、なんかご機嫌で歩いている姿は、なんとなく仕事終わりの死神さんに似ている。
少し、懐かしい。
そういえば、死神さん、どうしてるかな。執事さんに天界へ連れて行ってもらったんだと思うけど、あれから一ヶ月・・・。何の連絡もないし。
もしかしたら、もう元気になっているかも。
もしかしたら、どこかでレアを見ているかも。
そう思うこともあったけど、一体、どうやって死神さんに声をかけていいのか、なんて言葉を伝えたらいいのかわからなくて、天界に確認へもいけない。
レアだって、悪いと思ってる。
でも、アテネがいけない。レアはそう思ってる。無理なこと言って、責任とって死ね、とか、死神さんにひどいことしたりとか・・・。正直、許せない。
「ねぇ?・・・」
レアだって、一生懸命やってるのに、どうしてみんないつもいつも・・・
「ねぇ?ってば!」
下を向いてぼーっと歩いていたら、隣でレアに話しかける声が聞こえました。
急に声をかけられて驚いたレア。
隣には桜色の長い髪が似合う少女。フローラがいました。
「うきゃあ!?あ、あなた?いきなりなに!?」
後ろからこっそり尾行していたはずなのに・・・。いきなり隣に現れるとは・・・。なんて大胆な身のこなし。
「なに?って、こっちが知りたいわよ。あなたこそ、さっきからずっと私につきまとってるけど何?新手の勧誘?ストーカー?なにか話があるわけ?」
「れ、レアは別にそんな怪しいものでは・・・」
「あのねぇ、怪しいヤツに限って、自分は怪しくないって言うものなのよっ!あなた、何者?この街じゃ見
ないけど」
急に見つかって、話しかける言葉もなにも用意していなかったレアは急にいろいろフローラに聞かれてすでに頭がいっぱいです。
なにから話せばいいの?レアは女神だってこと?いやいや、そんなこと言ったら大変なことになるわ。
じゃあ、何を話せばいいの?死神さん?いや、これもダメ・・・かな。そしたら、次は・・・次は・・・。
「さ、さっきの馬車の事故!あれ、すごかったですね!!1人で治しちゃうなんて驚きました!!」
「あぁ・・・それか」
やっと出た言葉。それは彼女のことを褒めているつもりでした。
でも、不思議とフローラの表情は晴れずに、さっきレアに話しかけた時よりもなんとなく暗い印象でした。




