28 邪教徒?
「いらっしゃい!!」
「採れたてだよ!!今なら安いよ!!」
大勢の人が行き交う街。レアは1人、人間界を彷徨っていた。
死神さんが封印されてから1ヶ月。レアはあてもなくただ、なにか手がかりを探そうと人間界を歩き続けている。
ここは交易都市、ロロラド。
いくつかの街を結ぶ大きな道がつながっていて、古くからさまざまな人間が出入りしている。人間同士の交流が多く、物も、人も、情報も常に動いている。
レアがロロラドに来て数日。街には特に目立ったものはなく、観光場所、市場など一通り巡っては見た。
人間界では頼る当てはなく、子犬のように彷徨うレア。この姿を、あの女神は天界から見て、あの卑しい笑いを浮かべているのだろうか・・・。
炭鉱都市での一件を思い出すと胸の奥がムカムカとしてくる。
女神として、少し汚れたかもしれないけど、この湧き上がる気持ちはなかなか抑えることができなかった。
(いつか・・・、いつか・・・)
ズドガァーン!!
こぶしを握りながらワナワナと震えるレア。
そのすぐ近くで大きな物音が聞こえてきた。
「馬車が倒れたぞ!!」
「馬が暴走したんだっ!人が、人が巻き込まれてるぞ!!」
あたりが騒然とする。
馬が暴れる声が聞こえ、女性の悲鳴が響く。
レアは、何ができるわけでもないけど、いてもたってもいられないで騒ぎの方に走ってみる。
確かに、ひどい。
中年の女性が馬車の下敷きになっていた。大地には血の池が出来上がっている。
数人の男が馬車を持ち上げ、女性を引っ張り出すとその怪我は明らかに致命傷だった。
(また・・・闇の者が来る)
レアは懐にある死神の鎌に手を伸ばすも、あたりにはなにも見えない。
天使も女神も、魔族の姿も、回収される魂の色も見えない。
でも、あの怪我では助からないと思うんだけど・・・。
悔しいけど、アテネの運命の書ではあの女性は死なない。とでもいうのだろうか?
天使や女神の回復魔法ならまだしも・・・。
「どいてっ!!」
「うきゃ!!」
後ろから来た何かに、レアは突き飛ばされてしまう。
レアの隣を、薄い桜色の髪をした長い髪の少女が走り抜けた。
レアと同じくらいの年齢だろうか?でも、・・・。
その瞳はまっすぐに前を見ていた。
「フローラ様!フローラ様!!」
「わかってる!静かにして!!・・・これはひどい」
女性の身内だろうか、先ほどの少女に涙を流しながら懇願する男性の姿があった。
(あの子、フローラっていうのね。)
フローラは駆け寄って傷口をみると、その可愛い顔をしかめて肩から下げたカバンの中を探っていた。
重体の女性は顔色が青白く変わっていき、呼吸が浅く、早くなっていた。
このまま、失血死・・。
この場にいた誰もがそう思っていると、レアは思っていました。
「あれでもない~・・・これじゃなくて~・・ぁあっっ!!」
苛立ちながらカバンの中を漁るフローラ。
その姿をただ、見つめている。
なに?何が始まるの?人間たちをここまで引き付けるものが、あのカバンにあるの?
「ふ、フローラ様、お、お早く!!呼吸がっ!!」
女性の呼吸が急激に遅くなると、手を握りながらただ、ただ祈る男性は悲鳴混じりの声を上げた。
「うっさいわねー!!こっちも大変なのよ!!・・・あ、あったわ!」
カバンから取り出したのは2つのビン。
深緑に輝く液体。
緋く鈍く光る液体。
フローラは羽織っていた洋服を一枚脱ぎ、女性の傷口の上にそっとかける。
そして、ふたつのビンの中身を取り出すと、その材質はスライムのようにネットリとしていた。
ゆっくり、二つの液体を合わせて均等に混ぜていく。
フローラはその混ざり合った液体を傷口を隠すように塗った。
女性は、あまりの激痛に悲鳴を上げ、体をのけぞらせるも、男性に取り押さえられ身動きがとれない。
(何?なにかの呪い?、この子、邪教徒かなにかで、この街全体で信仰しているの?)
背筋に冷たい、なにかヒヤッとするものを感じました。




