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九話 オルトロス攻防戦―3 ※他視点


 迫りくる男を余裕を持って斬り伏せる。

 後ろを優雅に歩くカルマが、時々カメリアが討ち漏らした敵を暗器で素早く処理していく。

 拠点の最上階に向け歩いている二人。


 やはり変だなとカメリアは疑問に思う。


「カルマ。やはり変じゃないか?」

「団長もそう思いますか?」


「あぁ。敵が弱すぎる」


 犯罪組織の中でもオルトロスと言えば帝国でもトップクラスに凶悪な組織だ。

 騎士団が討伐しているとは言え、こんな風にあっさり倒せるとは思えない。


「まさか、既に逃げられているか?」

「いえ。それは無いかと」


 自信に満ちた声でカルマは近づいてくる男を処理しながら告げた。


「どうしてそう言い切れる?」

「アダム様が此処に居るからです」


 カメリアは確かにと思った。普段、こういう現場には出てこないアダムが出張ってきている。と言う事は少なくともオルトロスの幹部が一人は確実に此処に居るのかとカメリアは考える。


「だとすると。そろそろか?」

「えぇ。あちらを」


 カルマが見つめる先。この建物の中で取分け豪華な扉がある。


―― あの先から臭う。血の匂いが。


「行くぞ」


 扉をけ破り中に突撃する。

 比較的広い部屋の中、奥の椅子に腰かけ面倒くさそうに二人を見つめる男。

 壁際でもたれ掛かり、面白そうな表情でニタニタと見つめる男。


「もう来たのかよ。ちっ・・・ほらよ」

「いやぁ悪いね」


 ポイっと椅子に座っている男が金貨を投げ壁際の男に投げ渡す。


「たくっ。おめーらのせいで賭けに負けたじゃねーかよ」


「オルトロスの幹部だな」


 重たい腰を上げる二人の男。

 余裕がある。

 少なくとも、さっきまで襲ってきていた男達より遥かに強い。

 それにこの二人は知っている。指名手配犯のギメイとザーコだ。


「そうだ・・・あぁ名乗らねーぞ。そもそも知っているだろうけどな」

「それにしても、可愛らしいメイドまで、今回は大分良い収穫じゃないか?」


 こいつら。

 ゲスすぎる。こんな奴が帝国で犯罪行為を行っている等、絶対に許せん。


「私に勝てるとでも思っているのか?」


 剣を構え、警戒しながら告げる。

 後ろに居るカルマも警戒を始めていた。


「あぁ?とーぜんだろ。なんせ」


 タタっと後ろから音がする。

 増援かと二人を警戒しながら後ろを確認したカメリアとカルマ。


「お待たせしました」


「お前は・・・ノエルか!?何故此処に?」


 ローブを羽織ったノエルが部屋の中に入ってくる。

 二人を確認したノエルが「ギール卿のお陰です」と答え、カメリアの隣に移動する。

 ノエルが羽織っているローブはアダムの物だ。

 つまり、アダムはノエルの存在に気づいて?だから、彼がワザワザ危険を犯してでも、この場所に来たのか。


「助太刀致します。カメリア団長」


 と剣を構えるノエル。

 戦姫と呼ばれる彼女と騎士団長であるカメリア。

 そしてカルマ。


 帝国最強と諜報部のエース、そしてクレバス王国の英雄が揃っている。

 にも拘わらず、目の前の二人は一切焦った様子を見せない。

 何かあるのか?


「はっ援軍だとよ」

「あーこれは参ったね」


 ニヤニヤと余裕の笑みを続ける。

 どうしてこうも余裕を持っていられる?

 それに、先ほどから感じる嫌な予感は一体なんだ?


「なるほど」


 ふと、カルマが漏らす。

 スタスタと無表情で暗器を構え歩き出す。


「っ!!なぜ!」


 焦った様な声と同時に高い金属音が響く。

 カルマが容赦なくノエルを攻撃していた。

 暗器を片手にノエルと対峙して、慌てて飛びのくカメリア。


 戸惑いながら「どうしたんだ!カルマ!!」と叫ぶ。

 だが、攻撃を止めないカルマは「私を団長に付けた理由がわかりました」と簡潔に答える。


 離れるノエルを警戒しつつ、カメリアの隣に立つカルマ。


睨むノエルに「馬鹿ですね。まさかクレバス王国がオルトロスと手を組むなど」と無機質な表情で告げた。


「どういう事だ」

「そのままの意味です。違いますか?戦姫ノエル・ローズマリー」


 確信めいた眼で見つめるカルマ。


「あーあ。バレたじゃねーか」

「ま、関係ないだろ」


 それを裏付ける様に面白そうに告げる、ギメイとザーコ。

 一体どういう事だとカメリアは動揺するが、ノエルはカメリアを睨みながら剣を構える。


「何故?分かったんですか」

「そのローブですよ」


スッと暗器をノエルに突き付けながら問に答えるカルマはローブを指す。


「ローブ?」

「えぇ。そのローブの意味を昔アダム様と一緒に前大臣から聞いていますから」


ローブの意味?

一体何の事だと疑問に思うカメリアに対して、自信を持ってカルマは答える。


「そのローブの名前は『敵対者のローブ』と言うらしいですよ」

「そんな事で?ただ、私の姿を可哀そうに思ったから渡してくれたかもしれませんよ」


 普通に考えればそうだろう。アダムはかなり紳士的な人だからとカメリアは感じたが、それを否定する様に首を振る。


「そうかもしれませんね。ですが・・・その剣」

「剣?」


「その剣・・・使った痕跡がありますが、使いにくいと思いませんでしたか?」

「まさか」


ジッと剣を見つめていたノエルが気付く。

そして、カメリアもようやく理解した。


あ(・)れ(・)は(・)、(・)只(・)の(・)模(・)擬(・)剣(・)だ(・)と(・)


「普段騎士団が使う、殺傷性を抑えた模擬剣ですよ。そんな物を態々持たせてこの場に寄越す等、アダム様が味方に対して行う筈がありません」


「つまり」

「貴方は最初からアダム様が敵と認定した相手です」



 駆けだすカルマ。

 それに合わせて突撃するカメリア。


 激しい鍔迫り合いをしながら、カメリアはノエルに接敵する。


 カルマの読みは半分正しかった。

 ノエルはオルトロスと協力関係を築いていた。

 目的はカメリアの殺害。

 但し、アダムはその事に気付いていない。


 そして、仮にカメリアだけがこの場に居たら、ノエルの奇襲でカメリアは重症を負っていた。

 アダムの適当に言った言葉が全て都合の良いように解釈されて行く。



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