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十話 オルトロス攻防戦―4 ※他視点



 剣戟が響く。


 カメリアとノエルが激しく打ち合い、戦闘を行っていく。それに追随するノエルの攻撃は戦姫の通り名に相応しい程に、美しく無駄が無い。それに対して、カメリアの攻撃は苛烈で一撃、一撃全てに必殺が籠められ、防御を一切無視した全力の攻撃だった。


「流石戦姫だな。私の攻撃にこうも容易く対応できるか」


「くっ! こんなチンケな剣を渡してくるなんて・・・だけど!」


 ノエルが動く。


 カメリアが見せた一瞬の隙をついて、振り下ろし攻撃を最短で避けつつ、剣に魔力を集中させ切れ味を上げて突き立てる。


 殺った! と確信したノエル。


 だが、そんなノエルの攻撃はカメリアの鎧を突き刺す事も出来ずに、ガンツ! と手前で壁に激突した様な音を響かせて止まる。


 驚愕するノエルに、不敵に笑うカメリア。


「何!? どういう事?」


「さぁどういう事だろうな」


 明確な隙を見せたノエルを蹴り飛ばす。

 くぐもった声を上げて吹き飛ぶノエル。それを後目にカルマの様子を確認すると、苦戦はしているが、何とか二人を相手に立ち回っている様子だ。


「くそ・・・どうして」


 フラフラと立ち上がるノエル。その目には怨嗟の念が込められていて、どうしてノエルの様な人間がオルトロス等と手を組んだと疑問に思うカメリア。彼女はクレバス王国でも人望に厚く、不正は許さない人間だった。


「どうしてはこちらのセリフだ。何故、戦姫ともあろう人間がオルトロスと手を組んだ」


 ゆっくりと近づきながら告げる。


「そんなの決まっている・・・裏切りを行ったセブルディアを潰す為だ」


 裏切り?なんの事だと思うカメリア。そもそも、クレバス王国に対して裏切り行為等は一切行っていない。そもそも、クレバス平原の悲劇では、彼の国の嘆願で介入したくらいなのだ。


 恨みの籠った眼をしながら突撃するノエルの攻撃を受け止め、見つめる。



「裏切りとは何の事だ?」


「しらを切るか! 私は知っているぞ! お前達がレイン王女様の暗殺を依頼したと」


 一体何を言っているんだ?

 暗殺を依頼した先も目的も知っているカメリアからしたら、何を言っているんだと思い見つめる。


「何を言っているんだ?そもそも」


「うるさい!私は・・・お前達を絶対に許さない。私の忠義を捧げたレイン王女様を殺したお前達を」


 ギリッと歯を食いしばりながら睨むノエル。その様子を見てカメリアは確信した。何故此処にアダムが来たのか。何故、模擬剣を渡して此処に寄越したのかを。


 だとするとまだ、何かあるはずだ。アダムがわざわざ・・・自作自演の暗殺依頼をした意味が。


「全く・・・アダムは私達に対する期待が大きすぎるな」


「何を言っている!!」


 全力で剣を押し、ノエルを吹き飛ばす。


「今の状態では何も話せん。だから、先ずは拘束させてもらう」


 剣を正眼に構えて集中する。

 カルマが二人を抑えてくれている間にノエル嬢を無力化する必要があると判断したカメリアが剣聖として動き出す。


 同じ室内で、戦闘を続けるカルマ。

 男二人を相手取り、所々切り傷を負いながら、それでも無表情で敵の攻撃を的確にさばいていく。


「脳筋が私に勝てる訳ないでしょうに」


「あぁん!?雑魚が粋がってんじゃねーよ」


 大振りの一撃をしゃがんで交わすと追撃してきたもう一人の男の攻撃を横っ飛びで交わしながら、暗器を二人に向け飛ばす。

 暗器は彼らの足を掠め傷を負わせる。


 カルマは勝ちを確信した。


 スタっとその場に着地してホコリを払う。


「全く。一撃で死ねば苦しまなくて済んだでしょうに」


「あ?何言って・・・っぐうううう!」

「な、なんだこれ・・・がぁっ」


 ガタンとその場に蹲る二人。

 確かにこの二人は強力だった。実際、戦姫とこの男二人を相手取り、カメリアだけで対峙したらもしかしたら負けていたかもしれないとカルマは理解した。


 だが、カルマが此処に居る。諜報部のエースとして、戦闘能力の高いカルマは、暗殺が得意なのだ。特に暗器を使った、毒を用いた戦闘はカルマ本来の戦い方でもある。


「私の暗器には全て毒が塗ってあるのですよ。お二人は随分耐性が強かったみたいですが・・・流石に猛麻痺毒は防げないみたいですね」


 龍も麻痺させると言われている猛毒を塗った暗器を受けた二人が、その場に蹲りながらギロリとカルマを見つめる。それを涼しい顔で見下ろしながら、メガネを直し「安心してください。まだ、死にはしませんので」と告げツカツカと遠慮なく近寄り、慣れた手付きで拘束していく。



「さて、後はノエル嬢だけですか」


 どうやらあちらも決着が着きそうだと判断したカメリア。


「クリス」

「なんでしょうかお姉さま」


 いつの間にか室内に侵入していたクリスを当然の様に呼びつける。


「この二人を拷問官へ引き渡す様に。毒は後半日は持つでしょうから」

「畏まりました」


「あぁそうだ。アダム様は?下に居るのかしら」


 ふと気になった事を尋ねる。それに対して、膝を付き頭を伏せながら「既に城に戻っております」と告げるクリス。


「そう。まぁ後はノエル嬢の事だけだし・・・それにしてもどうやって彼女の事を知ったのかしら?」


 諜報部でも掴めなかった情報を事前にアダムは知っていた。

 それは、つまり諜報部を超える情報収集力があると言う事じゃないかと考えるカルマ。


「分かりません。本当に謎です」


「そうね。それにこのタイミングで来た事に何か大きな意味があると思うのだけれど」



 カメリアとノエルの戦闘を眺めながら告げるカルマ。

 同意する様に頷くクリス。


「彼女を拘束したらアダム様の所に伺いましょうか」


 そう結論付けてクリスに二人を連れて行く様に告げる。

 拘束した二人を連れて行くクリスを眺めながらカルマはもう一つの謎を考えていた。








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