七話 オルトロス攻防戦ー1 他視点
訓練所に集結している騎士団メンバー。
その中心にカルマとカメリアの二名は完全武装で待機していた。
諜報部からの連絡が何度も行き来する中で冷静に事態を分析している。
アダムが一人で行動すると言い外に出て行ったのは数刻前。
既にクリスが護衛として共に行動していると言う事も知っていた。
「それにしても、どうして急にオルトロスを狙ったのだろうな」
「分かりません・・・元々、前回の暗殺依頼の裏にオルトロスが暗躍していたと言うのは調べが着いたのですが・・・わざわざアダム様が行く意味が無い」
ジッと諜報部からの報告書を眺めながらカメリアの問に答えるカルマ。
彼の働きでカルマはオルトロスの存在までたどり着いていたが、だからと言って自ら危険に飛び込む必要があるのだろうかと考えていた。
そもそも、アダムは力が無いのだ。
知略はあるが、戦闘能力は無い、だからカルマは諜報部次席のクリス・ブロッサムをアダムに付けたのだ。
「何かあると言う事か?」
「どうでしょうか。私にはアダム様の考えは一端すら理解できませんからね」
それは、私も同じだと、カメリアは感じていた。
カメリア達の前に新たな諜報部の人間が来て膝を付く。
「報告致します。オルトロスとアダム卿が接触しました」
「そうか。場所は?」
「はっ。事前情報通りです」
あの店主には借りが出来たなと思いつつカメリアは「分かった」と言って下がる様に告げる。
だが、報告はまだそれだけでは無かった。
「もう一点ご報告がございます」
「なんだ?」
「アダム卿がオルトロスと接触する際入荷しているだろ?と、それを聞いてオルトロスのメンバーが卿を中に案内しておりました」
入荷している?
一体なんの事だ?
不思議に思いカルマを見ると、カルマも何か考え込む様にしていた。
「なんの事だと思う?奴隷売買についての何かだと思うが」
「入荷・・・もしかしたら、その誰かを助ける為に向かった?いえ、分かりません。どちらにせよ、アダム様が潜入したなら、私達も向かう方が良いでしょう」
「そうだな」と言いつつ頷くカメリア。
これ以上はクリスだけでは対処できないと判断したカメリアは騎士団の面々を見つめる。
「出撃するぞ」
静かに告げる。
この日、帝国国内で過去最大規模の戦闘が行われる。
―― オルトロス攻防戦が始まった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
帝国西地区。
犯罪集団が多く潜伏するこの地区。
皇女も手をこまねいていた、この場所に白銀の鎧を纏った集団が一斉に目的地に向け駆けだしていた。
逃げられる可能性を考慮して、先陣を切って最短最速で剣聖が拠点に飛び込む。
入り口に立っていた男を一刀で仕留め、扉をけ破り、中に突撃すると、一瞬で臨戦態勢に入るゴロツキ達。
「セブルディア帝国騎士団所属、騎士団長カメリアである。武器を捨て投降せよ」
「くそっ!騎士団だと!?」
「おい!武器もってこい!!」
怒号を響かせ、何人もの男共が叫びながらバタバタと一階に集合してくる。
一人の男が短刀片手に一直線に飛び掛かってくる。
「遅い」
最小限の動きで回避して蹴り飛ばす。
体をくの字に曲げて吹き飛び、壁に激突して崩れ落ちる男。
「な、なんだと?・・・これが剣聖の力だと言うのか」
壁にめり込んだ男を見て恐怖する男を見ながら「なにがだ?私はまだ、蹴っただけだぞ」と言って、帯刀していた剣を抜きだらりと構える。
「斬ってないのに恐れるとは・・・本当にお前らオルトロスのメンバーか?」
一歩前に出る。
一瞬で一人の男の前に移動する。
通り過ぎながら軽く剣を振るうと、盛大な血しぶきを上げ、倒れ伏す男。
全く見えなかったようで、遅れて隣に居た別の男が、青ざめた様子で地面に倒れる仲間を見つめ、そしてカメリアを見る。
「ば、化け物かよ」
「心外だな、化け物とは。それに、私以上の化け物には既に会っているだろうに」
男を斬捨て、血の付いた剣を拭う。
「お前達は既に引き込んでいるぞ魔王をな」
不敵な笑みを浮かべるカメリア。
その言葉と同時に騎士団の面々とカルマも到着する。
カルマが何事も無いかの様に優雅な所作でカメリアの隣に移動する。
「お待たせしました」
「いや、そんなに待っていないさ。それより、アダム卿はどこだと思う?」
辺りを見回したカルマは「恐らく地下では無いかと」と答える。
地下へと続く階段を見て「では、行くとしようか」と告げると「待ってください」とカルマが静止する。
「どうした?」
「いえ、恐らく地下よりも上に行くべきかと」
暗器を飛ばし、近づいて来た男の首に突き刺し、カルマはジッと上に続く階段を眺めていた。
「上?何かあるのか」
「えぇ。此処にいる敵は弱すぎますから、恐らく本体が居るでしょう」
「確かにそれは思ったが、そうだな」
下の階の敵は騎士団のメンバーが確実に倒している。
であれば、此処は任せておいて問題ないだろうと考えて、上の階に続く階段へと歩き出す。
「なら、私は上を片付けるとしようか」
「お供いたしますよ」
「ん?カルマは地下に行って良いぞ?」
彼女はアダムの専属だ。
この下にアダム卿が居るなら向かわせてあげるべきだと考え、伝えたカメリアの提案に首を振って拒否すると、カルマは無表情で下の階に続く階段を見ながら告げる。
「いえ、アダム様から『今日はカメリア団長の傍にいろ』と命じられていますから」
「そうか?なら良いのだが」
そこら辺は頑固だなと思いつつ、カメリアは首を振る。
なら、さっさと終わらせよう。
そうして、カメリアは上に向かっていく。
アダムが一人になりたくて言っていたカルマをカメリアに付けると言う言葉が独り歩きしていく。
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