二十五話 クレバス動乱―10
アダムのアドリブと暴走が起こした事態だと本人だけが知っている。そんな状態で余裕の態度を見せているアダム。
(何とか死ななくて良かったわぁ)
と本人だけが呑気に思っているが、周りの人間は恐怖する。この大臣は一体何処まで見据えていたのかと。
そして、ノエルは『これは踏み絵』だと理解した。
ここでアダムを捕らえるのか・・・それとも協力するのかを。
動けずにいるノエル。そんなノエルを動かしたのはアダムの発言からだった。
「さて。ノエル嬢?先程の報酬は頂けるのかな?」
「・・・っ!そう言うことですか」
いやぁ良かった。
ノエル嬢の全てを求めておいて。いや、こんな事態になるとは思ってなかったけど、ノエル嬢は義に熱い人らしいし、多分助けてくれるだろう。
ダメだったらクリスを生贄にしよう。
「かしこまりました」
「うん。頼むよ」
スッと礼をしたノエルが兵士に「国を窮地に追い詰めた悪逆王を捕らえよ!」と高らかに宣言する。その声に反応して、側にいた兵士達がバック王を捕らえるべく殺到する。
「やめろ!!やめるんだお前達!!!」
「ふむ。やはり太るとロクなことになりませんな。バック王・・・いえ、元バック王よ」
チビッたので少しくらい挑発してもいいよね?
「貴様!!きさまああ!!!ゆるさん!!許さんぞ!!」
「貴方に許しを得る必要はありませんよ」
だって多分だけど、爆発皇女の事だから君死刑だろうし。爆散させられるだろうなぁ。
でもなぁ・・・。
なんか、この男見てて思うけど・・・なんかコレジャナイ感がある。いや良いんだけどね?
なんかこう・・・そう!ゲーム的に言う所だとこのバック王は中ボスみたいな?小物みたいな感じがするんだよな。真の裏切り者として、バック王を表のボスにするのはちょっと違うね。
「何か、考え事ですか?アダム様」
「うん?いや、弱いなぁって思ってね」
不思議そうにしているクリス。
彼女は裏切り者仲間になったんだし、と思ってつい思いの内を伝えてしまう。いかんな・・・彼女とはもう少しコミュニケーションを取ってから話さないと。
「弱いですか?」
「いやいや、気にしなくていいよ。さて」
「アダム卿」
なんかさっきから俺に近づいていて、話したそうにしていた。多分今後の事だろうなとは思う。
でもごめん。正直帝国を止めるの俺じゃ難しいかもね。
「ノエル嬢、約束の地には行けたようですね」
「えぇ。アダム殿のおかげです。ですが・・・」
不安そうなノエル嬢。
うん。分かるよ・・・クリスが余計な事報告しちゃったから、多分爆発皇女の事だ、今頃ノリノリで軍師とか騎士団長とか集めて進行しようとしてるだろうね。
まぁ何とかできるか。
というか俺は既にノエル嬢の全てを貰うって話になってるし。
うん。イケるかも。
『俺の女に手を出すな』てきな。多分爆発皇女の事だから大笑いして矛を納めるだろう。
「何を恐れているのですかな?ノエル嬢・・・いや、ノエル・ローズマリー王よ」
「・・・っ!」
はっとした顔をするノエル。
なんか俺が認めたらノエルが王になれるみたいだし、この際公に認めてしまおう。そしてここだ!
クリスに向けて笑いかける。
「クリス。私は何を望んだんだったか?」
「ノエル・ローズマリー王の全てと」
ふっ決まった。
なんか滅茶苦茶驚いてるけど、俺の方が驚いてるよ。
「私の所有している者を襲うほど帝国は狭量ではありませんよ」
「・・・貴方は何処まで想定していらっしゃるのか。まったく、敵に回したくありませんね」
肩をすくめて呆れたような顔をする。
いや、俺弱いから、多分ノエル嬢が怒ったら一刀で死ぬけどね。
「さて、クリス。悪いが皇女に報告を」
「かしこまりました」
臣下の礼をしたクリスは直ぐに立ち上がり、何処かに移動する。というか、クリスは何時の間に爆発皇女に報告出来る伝を手に入れたのだろうか。
謎だ。
「さて、貴方が新たなクレバス王国の王になったのだから、早速今後の協定を結びましょうか」
「は、はい。わかりました」
なんだろうか。
なんか、凄く既視感・・・顔を真っ赤にしててその『ヤッちゃうぞ』みたいな顔をしてるんだけれど。
まぁ良いか。
ふふっこれでバック王が溜め込んでいた資金もノエル嬢から手に入れられるし、ノエル嬢は一応俺の者作戦が成功したっぽいから、事実上、この国も俺のモノだ。
えぇ悩む!!
どうしようかなぁ、先ずはカッコいい腕時計とか付けちゃおうかな。真の裏切り者ファッション的な。
――― クレバス動乱が幕を閉じる。
クレバス王国は新王として『ノエル・ローズマリー』を据え、前バック王は帝国の国内裁判にて他国に対する反逆とクレバス王国レイン王女暗殺依頼の事実により死刑宣告がされた。
クレバス王国は対外的には新たな新王である『ノエル・ローズマリー』と帝国との間で半永久同盟が結ばれ、その仲介役及び、『ノエル・ローズマリー』の婚約者として「アダム・グローエン」の名で発表される。
内部的にはクレバス新王国は帝国の属国として周知されていく。
だがアダムがクリスとカルマに言った「弱い」の一言がまたとんでもない勘違いを生んでいく事になるのは本人も理解していなかった。
後、一話で一章完結です。
ノクターンの(裏切り版)に関しては二話入ります




