二十三話 クレバス動乱―8
ふむ。詰んだ。
牢屋から出されて、兵士に連行されている。
なんか、死刑執行だとかなんとか。
早すぎじゃね?と思うけど、まぁ他国ならこんなもんか。でも、一応まだ希望は残ってる。
ノエル嬢が何とか死刑を止めてくれる・・・と思う。
あ、無理じゃん。
だって、ノエル嬢って一応国で二番目の権力者だよね?でも、今回の死刑って王様命令か――我、クレバスで沈む。
(いや!まて!焦る事は無い!)
そうだよ、まだ、クリスもいるじゃん。
皿洗いさせようとしたこと謝るから戻ってきてくれないかな?
そんな希望もむなしく、俺は断頭台に連れていかれ、膝を付かせられる。
目の前で偉そうにしてるバック王・・・うぜぇ。
「さて、何か申し開きがあるか?」
「申し開き?そもそも、何故死刑になるのかさっぱり分からないのに申し開きも無いだろう」
裏切り仕込みの件か?だったら、それクリスって事にするから、俺死刑にならない。
「ふんっ。白を切るか。良いだろう、此処で宣言してやろう」
宣言ねぇ。なんか、紙きれを出して高々と見せつけてくるけど、見えないし。
「レイン王女の殺害を企てた真の犯人は此処にいる帝国の人間である!!我が姉を殺害した帝国に死の鉄槌を今、此処に下そうぞ」
おぉおおお!と湧く兵士ども、言いがかりも良いところである。
それに、もし仮に本当だったとしても俺が処刑される意味なくね?
「さて、分かったか?」
「いや、さっぱり・・・と言うか、良いのかな?」
多分、クリスが動いてくれてるだろう。
なら、少しでも時間稼ぎをしないとだ。あぁそう言えば・・・こんな展開があったな。
「何が言いたい?」
出来るだけ含みのある表情をして。
「何、私を処刑したら公表されるように既になっているんだけどね。もし、そうなったら・・・この国を滅ぼしたのは帝国では無く、貴方と言う事になる、よろしいかい?」
おっと、何か後ろ暗い事でもあるみたいだ。
目が泳いでるし、これは行けるかもしれない。
ならば!!
「それと、そこの兵士君、君何か報告を忘れているだろうに」
「何を世迷言を!!」
「私は一人で此処に来たと本気で思っているのかな?」
あ、と顔に出る兵士が直ぐにバック王に耳打ちする。
見る見る顔が赤くなっていく、ゆでだこみたいに。
「貴様、連れの女は何処にいる」
「さて、何処にいるか―――あぁそうだった。何処に居るか知らないが私はある依頼しかしていない」
勿体ぶっていうけれど、依頼内容は良く分かってない。
だって勝手にどっか行ったんだもん。
と言うか、二人ともまだ来ないのかな。
「貴様・・・まさか!?いや、そんな訳はない」
めっちゃ笑うじゃん。
バレたわ、多分、出まかせだって。
「非道な帝国の人間の戯言など信じない。殺せ」
あぁ死んだわ。
振り下ろされる剣。少しは躊躇えよと思ったが、命令を遂行する為に振り下ろされる剣は俺の首元で金属音を響かせて止まる。
「お待たせいたしました。アダム様」
「うん。待った」
と言うか、冷静ぽく演じてたけど、普通に少し漏らしたし。
俺を押さえつけている兵士を蹴飛ばして、拘束を解いてくれるクリス。
肩を回しながら立ち上がり、冷静なフリをしてバック王を見ると、めちゃくちゃ動揺してる。
いや、良い顔だ。
その顔でご飯三杯は食べられるよ。
「な、なぜ!い、いや、何処から」
「いや、言っただろ?一人じゃないと。で、どうだった?」
何してたのか良く分かってないけどね。
大層な雰囲気で膝を付き頭を下げるクリス。
「はっ。先ほど伝令を飛ばしました。既に手筈は整っております」
「だそうだ。彼に分かりやすく伝えてあげると良いよ」
どや顔してるけど、正直何を伝令したか分かってないので聞きたい。
もしかして、暗殺組織に増援でも頼んだのだろうか。
「では、失礼して。バック王――並びにクレバス王国に告げる。レイン王女殺害を計画し、我が帝国に反旗を企てた容疑でバック王の引き渡しを要求する――だったが事情が変わりました」
コホンとどや顔をするクリス。
え?増援じゃないの?というか、暗殺組織に引き渡しって無理じゃね?まさかコイツ!?
「我が、帝国の要人を不当に死刑宣告した事は既に皇女並びに皇帝陛下にも報告しております。そして、皇女様より、開戦も辞さないと・・・さてどうされますか?バック王」
コイツ、あの爆弾皇女と面識あったのかよ。
いや、マズい、戦闘狂のあの皇女様だ・・・きっと大軍で攻めてくる。
いや、良いのか。
だって、この国貰えそうだし。
「な、なっい、いや、そ、そもそも帝国がレイン王女殺害を企てなければこんな事にはなっていない!!」
狼狽えてるけど、先に手を出して、この展開を予想出来てなかった?あ、そうか!
多分だけど、帝国を抑える何かが居たのか?・・・オルトロス?
(多分、オルトロスを使って国内でテロでもしようとしたんだろう。ふっ今日の俺は冴えている。多分ノエル嬢を捕まえたオルトロスとバック王は繋がってて、邪魔なノエル嬢をバック王がオルトロスに捕まえて売り渡す様にしたな?)
「残念だけど、その言い分は通用しない」
「な、何を言うのだ!」
「それは、私から説明するわ」
めちゃくちゃカッコイイ感じで登場したノエル。
だけど、遅いよ。クリスが間に合わなかったら死んでるんだけど。
「なっ。ノエル・ローズマリー!な、何を言うつもりだ!」
「レイン王女様の最後の告発を」
冷たい表情をしながら、ノエルが懐から取り出した手紙を読んでいく。
王女本人の手紙を示す王印入りのそれを高らかに。
「私を殺す依頼をしたのは子爵ではありません。真犯人は我が兄であると分かりました。兄は王を目指している事は知っていましたし譲る気でもありました、ですが私を殺してでも王になる者に王の資格はありません。戦争が終わり次第、この件を問いただし、兄を更迭します。 もし、私が死んでしまったら、我がクレバス王国は『ノエル・ローズマリー』に託します・・・そして、その承認をセブルディア帝国にお願いするよう『アダム・グローエン様』にお伝えしておきます」
「な、なんだそれは!!そ。そそそんな物あるわけが無い!偽造書類だ!!」
憤慨するバック王・・・まぁ俺も偽造書類だと思うよ。
だって、俺頼まれて―――たのか?
え?あれ、遺言だと思ってたし・・・良く分からなくて適当に聞き流してたんだけど。
まぁ良いか。うん――これはチャンスだ。
だって、もしそれが本当なら、俺を殺そうとした人が真犯人だって事・・・しかも俺は大臣である。
結構偉い大臣。給料は少ないけど。
つまりだ。
「さて、私は『ノエル・ローズマリー』の国は承認する気でしたが、貴方の国は承認できませんね」
「き、貴様っ図ったな!何時からだ!」
「強いて言えば最初からですかね」
ノエル嬢をトップにするのは元々、此処に来る前に策謀していたので最初からと言えば最初からなのだ。




