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二十一話 クレバス動乱―6



 「私をですか?」


 スッと自身を抱きしめながら見つめるノエル。

 ん?あぁなんか変な風に勘違いさせてしまったかもしれない。いや、別に勘違いしてもらっても構わないのだけれど。


「なに、変な話ではありませんよ。今後、ある事の協力をしてもらいたい」

「ある事ですか?それは一体何でしょうか?」


 裏切る際の協力なのだけれど、まぁ一旦置いておく。

 それに、まだ彼女は真の協力者でも無いし。


「それは後でわかりますよ。それで?どうしますか?」

「一先ずアダム卿の持つ情報次第では構いませんか?」


 まぁそりゃそうか。でも、俺の持っている情報と言うのは別に大したモノではない。

 でもあれって・・・遺言だったのかもしれんな。


 見つめるノエルに「えぇ。構いませんとも」と言ってコホンと小さく咳払いする。

 大層な雰囲気を醸し出しているけれど、正直そんな大した情報でもない。


「レイン王女に以前お聞きしたのですよ。アルカバニアの離宮と」

「王女様が・・・アダム卿に?」


 信じられないと言いたげな様子だ。

 そんなに不自然なのだろうか?離宮だよ?それくらい誰でも知っているんじゃないだろうか?


「えぇ。確か・・・『アルカバニアの離宮思い出の地に』と」


 詩的な言い方だよなぁと思ったもんだ。

 そもそも思い出の地って俺はその何とか離宮に行った事無いので思い出も何も無いのだけれど。


 俺の話を聞いて考え込むと「思い出の地、あぁっ!!」と何かを思い出した様に立ち上がるとノエルは「す、すみません。少しお待ちを」と言って駆けだす。


 バタンと扉を開け放ち、大急ぎで何処かに走って行ってしまう。

 そんなに大急ぎで一体何があるのだろうか。


「あの、アダム様、少しよろしいでしょうか?」

「なんだい?」


 滅茶苦茶驚いた表情を浮かべるクリス。

 ふふっ恐ろしいだろう?

 此処まで全てアドリブなんだよ?

 


 「何処までご存じなのですか?」


―― なんも知らん。


 でもこういう時は・・・。


 立ち上がり、優雅に、そして悟られない様に部屋の窓際まで移動して振り返る。


「全てさ」

「っ!!」


 決め顔も忘れない。

 手を顔に当てて驚愕と尊敬の眼差しを向けるクリスに笑いかける。

 

「さて、彼女が戻ってくるまで暇だからね。今後についてクリスに頼みがある」

「頼み・・・ですか。はっ!まさか!?」


 察しが良いなと思いつつ頷く。

 何がまさかかよくわかってないけど。

 俺の肯定を受け取って、クリスがその場で深くお辞儀をして「畏まりました。即座に行動を開始します」と言って、何か良く分からない仕事を引き受けてくれる。


「頼んだよ。この作戦の成功は今後の行動に直結する・・・つまり失敗は許されない」

「えぇ勿論。必ずやり遂げて見せましょう」


 何をやり遂げてくれるのだろうか。

 まぁ彼女の事だ、国王暗殺とかだろう・・・ふふっ。それなら話は早い、暗殺した後はノエル嬢を国王にすげ替えて新たな真クレバス王国に変貌を遂げる。


 そこで、俺は彼女を使って金をせびって生きるのだ。

 でも、俺が此処に居るの知られているし、変な疑いを掛けられるのも嫌だな。

 

―― 今から謁見して『観光に来ました』的な無害アピールしといた方が良いかもな。


「ふむ。よし決めた、悪いがこれから少し別行動をしよう」

「どうされるのですか?」


 首を傾げるクリスに「何、少し挨拶にね」と言って笑う。


「挨拶ですか・・・畏まりました。では、私はその間に行動致します」


「うん。頼む」


 いざとなったらクリスが勝手にやりました的な感じにすれば良いし。

 

 クリスは即座に行動を開始して部屋を後にする。

 あ、ノエル嬢が戻ってきた時、俺達が居ないと困るか。


 ノエルに書置きを残して俺も外に出る。

 さて、謁見しに行こう。



◇◇◇◇◇




―― どうしてこうなった。



 薄暗い石畳の部屋。

 鉄格子。


 ポツンと立ち尽くす俺。

 何故か今、俺はクレバス王国の城内地下にある牢屋に投獄されている。


 見張りの兵士も『なんでアンタが此処に居るの!?』みたいな表情をしているし。

 俺の方が知りたいのである。

 

 数刻前。

 俺は、この国の王であるバック王に謁見する為に、外に居た兵士に「王に挨拶がしたい」と告げて仲介を頼んだ。これがイケなかったのか分からないが、一応兵士も王に伝えてくれて直ぐに謁見が叶った。


 謁見室に案内されて、いつも通り他国の王に対する礼をして挨拶をしたのだが、バック王は俺を見るなり「裏切り者の帝国大臣め」とニヤニヤ笑いながら兵士を呼び出して俺を捕らえたのだ。


 まぁ裏切り者と言うのはあってるけど。なんで挨拶しただけで捕まえるのこのデブと思った。

 前回会った時より太ってたし、余程金をため込んでるなとか内心思ってたけど、読心術でも覚えているのだろうかと不思議に思うほどの速攻逮捕である。


 一応「これは一体なんの真似ですか?」と聞いたけど「貴様の国に対する報復である」とわけわからん事を宣って聞く耳も持たずに、あれよあれよと言う間に牢屋にぶち込まれていた。


 良く分からないので、牢屋に居る見張りの兵士に近寄り「これは何で捕まったのかな?」と尋ねる。

 見張りの兵士も「分かりません。ですが」と言葉を濁しながら俺を見る。


 「ですが、先ほど国王陛下より、アダム卿・・・貴方の死刑が宣告されました」



 ・・・どうやら、俺は裏切り者になる前に殺される様です。



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