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十八話 クレバス動乱―3 ※他視点



 帝国城内の外れにある建物。

 諜報部の拠点として、諜報部員以外の人間は基本的に立ち入りをしない場所。


 その室内にカルマを引き連れてカメリアが入室する。


 普段、騎士団長が来る事など滅多に無い事態に、諜報部の人間は驚きつつも、その場に跪く。

 一体何があったのだろうかと思いつつ全員が様子を伺っている。


「すまないな。突然来てしまって。カルマ、それで?誰なんだ?」

「えぇ。ウラ・ギールは何処に居ますか?」


 ギール?どこかで聞いた名前だなと思うカメリアは思い出す。

 アダムが名乗った偽名だと。


「はっ。なんでしょうか」


 スッと一歩前に出て跪く諜報部の制服を纏った男が跪き礼をする。


「諜報部は基本的に何時で機能出来る様にシフト制を設けているのですよ。そして、この男は何時も決まった曜日に休みを取っています。財務部が給料の帳簿を提出する前日に」


「・・・っ」


 小さくギリっと歯ぎしりしたのをカメリアは見逃さなかった。


「どうしたウラ・ギール?なんで今、そんな態度を取った?」

「なんの事でしょうか?」


 諜報部の人間だけあって白を切るのは上手だなと感じつつ「カルマ、続けろ」と告げた。


「えぇ。さて、貴方にはある容疑が掛けられている。今、自白するのであれば情状酌量の余地はありますが、どうしますか?」


「容疑ですか?なんのことでしょうか」


「横領及び、国家反逆罪・・・自分で分かっているでしょう?」


 他の諜報部の人間が全員、ギールに対して怨嗟の籠った眼を向ける。

 カルマが此処までハッキリと全員の前で言い切る等ありえない。つまり、諜報部の根幹を揺るがす行動を目の前の人間が犯したと理解した。


「私は帝国臣民です。そして、諜報部としての誇りもあります。なので、その様な事はしておりません」


「そう・・・所で、諜報部としての誇りと言いましたね?」


 ギールを見下ろすカルマの目が冷たくなっていく。


「えぇ」


 こちらに証拠が無い事は目の前の男が一番分かっているのだろう。カルマが回りくどい行動をしている時点で気付いたみたいだ。先ほどから余裕が見える、だが、どう見ても、目の前の男が犯人だとカメリアは直感していた。


 どうやってコイツから自白をもぎ取るのかとカメリアが見ているとカルマは平坦な声で告げる


「なら自害しなさい」


「っ!どういう事ですか」


 目を見開き驚愕する男に無感情で「諜報部としての誇りがあるのでしょう?」と告げる。


「それとこれとどう関係があるのですか?」

「あら?おかしなことを言うのですね。諜報部の誇りが今、貴方の容疑で傷つけられているのですが?その容疑を晴らすなら自害するしか無いでしょうに・・・だって貴方は誇りがあるのでしょう?」



 沈黙する男。

 カルマの言っている事が正しいと思ってしまったからだ。


「自害では無く、行動で誇りは取り戻せます」


「私はそう思わないわ。で?自害するの?」


 すうと目を細めて睨むカルマに「横暴です」と小さく口にする男。



「一つよろしいでしょうか」


 顔を伏したまま、一人の女性諜報員が発言を求める。


「何かしら?カル・イー」

「もう少し情報が集まってからご報告しようと思ってましたが、ギールの此処最近の金使いについて少し違和感がありました。使い過ぎじゃないかと」


「だそうだけれど」


 ギロリと全員がギールを見つめる。

 思い当たる節があるのか、頷いている諜報員もいる。


「それは勘違いです」

「そう。なら確認しましょうか?」


「まってください。尋問ですか?拷問ですか?どちらにせよ、確たる証拠が無い以上、帝国法では私を捕らえる事は出来ない筈です」


 キッと睨みつけ反論する。

 此処まで、怪しまれて尚逃げ道を探そうとするとは。

 だが、事実、今の所彼を捕らえる事は出来ない。もどかしさを感じるカメリア、だが、カルマは違った。


 無表情だったカルマは笑う。


「捕らえられますよ?」

「はい?なんで!?」


 すぅっと目を細めてカルマはメガネの位置を調整する。


「言ったでしょう?国家反逆罪の容疑と。最近オルトロスの奴隷売買所を討伐しに行ったのは知っていますよね?」


「それがなんだと言うんですか!?」


「その際にギ(・)ー(・)ル(・)と名乗る男が居たのを騎士団が目撃しています。そして、その男がアダム卿の暗殺を依頼した事も」


 なるほど。

 流石にこれは読めなかったぞ・・・と感心するカメリアは「確かに騎士団からギールと言う男が居た事は聞いている」と便乗する。



「なっ!! それは諜報部で調べが着いていたじゃないですか!! アダム卿の自作自演だと!」


 立ち上がり憤慨するギールに対して、他の諜報部員も立ち上がり「そんな事実はありません」とカルマ達に便乗する。


「捕らえなさい」


 その言葉で即座に動き出す諜報員にあっという間に拘束されるギール。

 暴れながら、ギロリとカルマを睨みつけ「こんな事が許されて良いのか!!」と叫ぶが、気にせずカルマはギールの目の前に移動して見下ろす。


「あら?最良の結果でしょうに」

「なんだと!?」


 睨むギールに対して笑う。


「だって死にたくないのでしょう?潔白なのでしょう?ならば、その誇りを証明する為に捕縛されるのですから」


 冷たく言い放つカルマに青ざめていくギールを見つめ「連れて行きなさい」と指示を出して連行していった。




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