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十六話 クレバス動乱―1 ※他視点


 アダムが王国に向かってしばらくして。

 朝早くから起きたカメリアは早速カルマと合流して先の一件とアダムからの指示に向けて動き出そうとしていた。執務室に赴いた二人は互いに向かい合うようにテーブルを挟んで座る。


「さて」と互いが座って直ぐにカメリアが切り出す。


「さて、早速アダム卿からの仕事を行いたい所だが、先に聞かせてほしい。カルマ、アダム卿の護衛は誰が付いている?」


「アダム卿の護衛にはクリスを付けました。問題ないでしょう」


 カチャリとテーブルに紅茶を二人分注ぎながら告げる。

 なら問題無いなと感じたカメリアは、注がれた紅茶を口にして一息つく。


「それで、例の件はどうだ?」

「はい。報告書の改ざんの事実は見つけられませんでした。時間が経ちすぎているというのもありますが」


 カチャリとメガネを直して告げる。

 ノエルから聞かされた告発状の証拠、それが本当に事実なのか判断出来ないと言う事だ。

 カルマからしても、諜報部の人間に情報の改ざんを行う存在が居るとは思いたく無いという思いもある。


「だが、ノエル嬢の発言はどう見ても」

「えぇ。間違いなく告発状その物は届いているのでしょう・・・それも暗殺依頼にカメリア団長の名前と帝国印章入りの証拠付きで」


 勿論カメリアはそんな指示は一切していなかった。だが、印章が偽造出来ない以上は筆跡等が違っても証拠としては十分機能する。少なくとも国の中に居る誰かが行った事は確実だ。


「まったく。アダム卿にも困った物だな・・・恐らく犯人を知っているぞ」

「えぇ。そして、あえて犯人を私達に探させようとしてますね」


 本当に彼には困らされるとカメリアは思う。


「ただ、あそこまで露骨に王国に向かったのだけは分かりませんでしたが」


カメリアとカルマの『せめて少しだけ話したい』と言うお願いを振り切ってノエルと先行して王国に向かって行ったのは疑問だった。


「観光とは良く言ったものだがな。国の大臣が観光など出来る訳が無いだろうに」

「えぇ。観光ではなく会談でしょうね。まぁアダム様なりの冗句なのでしょう」


 全く面白くない冗句だし、正直観光などしないで、国に残って貰いたいと二人は考えるが、一先ず置いておく。


「さて、彼の話は置いておいて本題だ」

「はい」


 スッと和やかな雰囲気から、真剣な物へと変わる。

 ピリッとした室内で「アダム卿が言っていた給料交渉についてだ」と真顔で告げるカメリア。


「はい。あれこそがヒントでしょう。今回の事件に繋がる・・・それも財務補佐では無くカメリア団長に指示をしたのはそれが理由でしょうね」


 大げさに頷くカメリア。

 

「あぁ。恐らく卿は今回の事件で信用できるのは今の所私と君だけなのだろう、流石に皇女様を動かす等出来んし、リーナ軍師は知略はあるが戦いには向かない」

「えぇ。そういう事でしょうね」


「そうなると、何処から手を付ける?やはり諜報部からか」

「いえ、それも考えましたが、先ずは味方を増やす方が先決かと。なので騎士団から調査をしましょう」


「どういう事だ?」


 首を傾げるカメリアに、紅茶を優雅に飲みながらカルマが告げる。


「私の考えですが・・・隠蔽を行った人間は諜報部の人間と財務部門の誰かでしょう。そして一番の問題は団長の名前を入れた依頼書と告発状の存在です」


「それは分かるが。なら猶更、諜報部から攻めるべきだろうに」


 自分が諜報部だから手加減したいのか?と考えるカメリアに「私を舐めないでください」とメガネを光らせながらジッと見つめる。


「諜報部の人間に手加減は不要。ですが・・・なら何故アダム卿が全員の給料を見直せ等言ったのか。其処に理由があるはずです」


「まさか他にも居るのか?」

「いえ、可能性の話です。いなければ問題無し・・・ですが、一番怖いのは疑心暗鬼になる事です」


 諜報部と財務だけを調べれば恐らく簡単に見つかる。

 その確信がカルマにはある。だが、アダムはあえて金の動きを全員分調査しろと命じている。

 全員を調査して、確実に不正を行っている人間が居ないかの調査をする。その先にアダムが求める何かがあるとカルマは理解していた。


「疑心暗鬼か。分かった。だが、騎士団を調べている最中に証拠を消されたらどうする?」

「えぇ。なので一番頼れる存在に力を貸してもらうのです」


「情報を漏らさず、一気に調べるのに最適な人がいるでは無いですか」


 最適な人?

・・・まさか。


「まさかとは思うがライザ様を頼るのでは無いだろうな」

「そのまさかですよ。既にご相談しました」


 胸を張って告げるカルマ。

 まさか、皇女自らに嘆願するとは・・・ライザ様は話の分かる方ではあるけれど、何と無謀な事をするのだと驚愕する。


「勿論、ライザ様に動いてもらう訳では無く、魔法を使ってもらいます」

「隠匿魔法か?」


 コクリと頷くカルマ。

 確かに隠匿魔法、それもライザ様の隠匿魔法であれば城内を歩き回って姿を見つけられる者は一人しかいない。

 そして、その一人もカメリアと同じ英雄とされる一人だ。裏切り等絶対に考えない人間で、口も堅い。


 そして、カルマとカメリアが本格的に調査を開始する。

 アダムは給料を上げて欲しいだけだった為に言った一言が帝国動乱を引き起こす。



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