十五話 商売人アダム但し無能
クリスが案内した宿はやはり無料だった。
有能すぎる。
最悪クリスに皿洗いさせようと思ってたんだけど。
無料なのに部屋は豪華で、どうやって稼いでいるのだろうと疑問に思ってしまうが、無料だから深く考えるのは止める。昨日はクリスの襲来だったりで色々あったので疲れて直ぐに寝てしまった。
だからか、寝覚めも良く、やる気に満ち溢れている。
天気も良い事だし、絶好の裏切り日和である。
宿を出て外の景色を見ながら、金稼ぎの方法を探すべきだと思い商業地区へ向けて歩き出す。
何故か俺の横にクリスが居るが、気にしない事にした。
「アダム様。本日はどうする予定ですか?」
「あぁ少し下見をして、その後はノエル嬢と合流する予定だよ」
「下見ですか?」
「あぁ。これも将来の為に必要な事だよ」
含みのある表情で見つめる。
君にも何時か手伝ってもらうからねと言う期待を込めて。
「所でクリス。君は今の組織に不満は無いかな?」
「不満・・・ですか?」
例えば給料が安いとか。
彼女は、実力もあるみたいなので、末端の暗殺組織に置いておくのは勿体ない。
「そうだ。君は随分優秀じゃないか」
「お、恐れ入ります」
少し顔を赤らめる。
褒められ慣れてないのかな?
「君がもし、今の立場から抜けて・・・そう、例えば僕に仕えるとかそう言うのは考えてないかい?」
息を飲みこむ彼女。
俺を見つめて少し興奮した様子で俺を見ている。
やはり、彼女も金か。金次第で俺に仕えるみたいな感じだろう。
ユーリ君にお願いしとこう。
「それは・・・あの。よ、よろしいのですか?」
「あぁ構わないとも。とはいえ、直ぐに答えを出すのも難しいだろうから、ゆっくり考えてくれ」
直角にお辞儀して「畏まりました!!」と叫ぶ。そんなに嬉しいのか・・・暗殺組織って随分大変なのだなと思ってしまう。
ギールとしては会っているけれど。
一応初対面なのに、俺の提案にOKしそうな雰囲気を出しているくらいだから、きっと貧しい生活なのだろう。俺と同じように。
商業区域が見えてくる。
昼間と言う事もあって賑わっていた。
さて、クリスの仕込みも済んだので次に移ろう。なんかクリスが「姉さま・・・勝ちました」みたいな事を言っている気がしたけど、気のせいだ。
店に並んでいる商品をざっと見て回っていく。
やはり俺の前世知識を使えば一攫千金も間違いない・・・と思う。
「魔道具関係は高いようだね」
「えぇ。魔道具に使われる水晶は魔物からしか出ませんから」
それは知っている。
でも、それが何で高いのだろうか。確か、冒険者は結構な数居ると思ったけれど。
「帝国の冒険者は少ないか?」
「いえ、そんな事はありません。実際、帝国では此処に売られている魔道具より安いですよ。供給量が多いので」
「では、なんでこの国では高いのかな?」
「それは・・・冒険者の数が少ないからでしょう。確か、法律が変わったとか」
ん?法律が変わった?
そんな話は聞いた事が無いのだが、物知りなんだな。
「どんな法律なんだ?」
「先の戦争から復興を目指す関係で、冒険者が回収した魔物の素材を税として3割徴収すると。我が帝国も税は課してますが、1割ですので、随分上がったと嘆いて他国に移籍する冒険者が増えたとか」
「そうか。ノエル嬢は?」
流石に三割はボッタクリだと思うが。
ノエル嬢は賛成したと言う事だろうか?だとすると、金で、ノエル嬢を買えるかもしれない。
「いえ、反対していたみたいですよ。ただ、レイン王女の後釜で王になったバック王の強い後押しで可決されたとか」
バック王?あぁそんな奴いたな。
戦況を見に行けと皇女に言われて行った時に、見た気がする。
最後尾で偉そうにふんぞり返ってた男か。
俺も、あんな風に自堕落に金に溺れて生活したいと思ったな。
(思いついた!!)
―― 使えるかもしれん。
過去一頭が冴えわたる。
あの男・・・確か結構金持ってそうだったよな?であれば、ノエル嬢を焚きつけて男を断罪させる的な・・・あ、ついでに彼女に新たな王になって貰うのはどうだ?
ふふっイケる。
こんな商売をする必要なんてない。
もっとスマートに金を手に入れる方法があるじゃないか。
ノエル嬢を王にして、その裏で俺は、ノエル嬢から貢いで貰った金を元に新たな仕込みを行う。
最終的に、クレバス王国に移籍するのも悪くないな。
「見たい物も必要な情報も手に入った」
「っ!流石です!ではノエル嬢の元へ?」
何が流石なのだろうか?
まぁいっか。
「あぁ。行こうか」
爽やかスマイルで告げる。
何故か尊敬の念をクリスから感じるが、それどころではない。
俺は、ノエル嬢を口説くぞ。
そして、あの男の金を貰うんだ!!




