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十四話 宿って無料なの?



 宿に向けて歩いてく。

 本当に逆方向だったみたいで、かなり歩いている。

 ちょっと疲れた。


 それにお腹も空いてきたので正直、宿に入る前にご飯を食べたい。

 出来ればステーキとかガッツリした物が欲しいな。


 金が無いけどね。


「そう言えばクリスは此処に来た事があるのかい?」


「いえ?どうしてですか?」

「いや、随分詳しいんだなと思ってね」


 始めてきた場所なのに地図も無しにスタスタと歩いてくし、随分詳しそうだと思った。

 もしかして、良いところを見せようと適当に歩いているのだろうか。


「ご安心ください。都市の構造は全て把握しておりますので」

「優秀だね」

「ありがとうございます」


 ポッと顔を赤らめる。

 いや、本当に優秀じゃん。なんで、こんな子が暗殺組織の下っ端なのだろうか。

 とても不思議だ。


「そう言えば聞いたよ。君はこの間のオルトロス討伐の際に大活躍だったと」

「え?あ、はい」


 なんか歯切れが悪いな。

 あぁ。自分がオルトロスの奴隷売買現場に居たのが俺に知られると捕まるとか考えているのかな?

 アダムとしては彼女とは会ってないし。


「何でも、奴隷に売られそうになっていた子達を助けたんだろ?良い事じゃないか」

「え?そうですね」


 なんか話が合わない気がする。まぁ良いか


「それで、捕まっていた子達がどうなったか知っているかな?」

「あぁそういうことですか。捕まっていた女性は皆帝国騎士団が保護して、元の場所に護送致しました」


 色んな国の子達が居たような気がするけれど、全員元の国に戻れたのか。流石帝国騎士である。ぶっちゃけ少し怖いわ。


「そうか。それは良かった。オルトロスはどうなったかな?」


 邪魔そうだから、消したいけど。いや、今度こそちゃんとした奴隷を見つけて来てくれるかもしれないから、今度こそ、奴隷を助けるフリをしつつ仲間集め出来るかな?


 一瞬クリスが難しい顔をして「それが少し問題があります」と告げる。

 どんな問題だろうか。


「問題?」

「えぇ。今回、幹部二名を捕縛したのですが・・・実は彼らは幹部としては末端でした。なので、まだ壊滅するには時間が掛かるかと」


 確かそんな話をしてたな、全く聞いてなかったけど。

 俺が奴隷売買現場に居た事がバレるとマズいので、詰められる前に出立したからあんまり聞いてなかったわ。


「そうか。まぁ暫くは問題ないだろうね」

「そうですかね?」


 うん。その内どうせカメリア団長か童顔軍師が捕まえるだろう。


「あぁ。それより、組織内はどうだ?」


 暗殺組織ってどんな感じなのだろうか?

 ゴリゴリの縦社会とかだったら何か嫌だな。


「そうですね。皆優秀なので、私も必死ですよ」


 遠くを見つめながら告げる。

 彼女の様な優秀な人が末端なのだからきっと上には上が居るのだろう。

 いやな世界である・・・俺みたいなのが暗殺組織に入ったら多分一時間も立たずにクビか、文字通り首が飛ぶだろうな、物理的に。


「そうか。俺からしたら、君の様な秀才が埋もれているとは勿体ないと思うけどね。俺の護衛等という雑務を任せてすまないね」


 カルマに後で叱っておこう。

 だけど、なんだか彼女の俺を見る目がドンドンとカルマに似てきている。

 なんか、こう・・・獲物を狩る目と言うか。


「アダム様の護衛を務める事は雑務ではありませんから」

「そうかな?まぁ、君が職務に忠実なのは立派な事だ」


 うんうん。

 立派だから、その『やっちゃうゾ』みたいな目を止めて欲しい。

 最近カルマも同じ目をしてくるので余計に怖い。


「ありがとうございます。あ、あそこです」

「アレかい?」


 クリスが指をさす先には立派な建物が立っていて、どう考えても高級宿だった。

 一泊、金貨一枚とかするぞ絶対に。


「えっと?本当にあそこなのかい?」

「?えぇそうです。受付しましょう」


「ま、待とうか」

 

 首を傾げて俺を見つめる。

 いやいや。そんな顔しても金無いって。


「ここ高いんじゃないかい?」


 冷静さを装って告げる。俺が金欠だと思われるのも少し恥ずかしいので「実は城にお金を置いて来ていてね」と言ってさりげなく金を忘れた的な感じにした。


 実際は全財産を持ってきているが。


「問題ありませんよ?支払いは無いですから」


 支払いが無い?

 え?つまり無料?どうやってこの宿は生計を立てているんだい?


「タダ?って事かな?」

「えぇ?そんな感じです」


 不思議そうに俺を見つめる。

 ま、まぁタダなら良いか。


「そ、そうかい?なら、泊まらないと損だね」

「えぇ。なので受付に行きましょう」


 ニコリと笑い、気にせず宿に入っていくクリス。

 いざと言う時は逃げられるように、少し遅れて宿に入ると、執事服を着たハンサムな爺さんが丁寧にお辞儀をして「お部屋にご案内しますアダム様」と恭しく接客してくる。


 もう、受付を終えてたのか・・・やっぱりクリスって優秀だな。


「では、明日もよろしくお願いします」

「あぁ。じゃあまた明日」


 クリスと分かれてハンサム爺さんに連れられて部屋に向かう。

 部屋の中はやはり豪華だった。


 多分、貴族とかが使うような部屋だ。まぁ無料だし気にしないでおこう。

 最悪有料だったら・・・クリスに皿洗いでもさせておけば良いか。



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