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閑話ーアダム篭絡作戦 カルマ編


 オルトロス攻防戦の少し前の日。

 執務室でゆっくりしているアダムが居た。


 訓練を終えて汗を流したアダムが執務室の椅子に座る。


 本来であればこれから仕事なのだが、アダムは正直暇だった。

 なぜなら、ここ数日は仕事を次々と押し付けられて、外に出る事も出来ず、ひたすら事務処理を続けていた。結果、仕事を前倒しで処理していったので正直もう仕事が無いのだ。


 ギシっと椅子が軋む。

 暇だ。


 正直外に出て暗殺者襲撃イベントでもしてみたかったのだが。

 いや、まぁ死にたくは無いけど、最近はカメリア団長からの指導で大分強くなった自負がある。きっと大丈夫さ。


「それよりも、仕事は大丈夫かい?」


「えぇ問題ありません」


 いや、仕事に行って欲しいんだけどな。

 ジッと机の脇で待機するメイドのカルマ。

 最近何故かカルマはずっと俺の傍から離れないのだ。


 何でだろうか・・・いや、専属メイドだけどさ。


「もし忙しいなら、少し席を外しても良いんだよ」

「いえ、私の仕事はアダム様のお世話ですから」


 スッとメガネを掛け直して無表情で告げる。

 ぶっちゃけ綺麗な子なんだけど・・・怖い。


 特に最近は俺を見る目がその・・・なんかヤバいのだ。


「所でアダム様一つお伺いしたい事があります」

「なんだい?」


 俺に聞きたい事?

 一体何だろうか、暗殺依頼の自作自演は流石にバレてないだろうし。


「アダム様は女性に興味がありますか?」

「んん?一体なんの話だい?」


 真顔で見つめるカルマ。

 先ほどよりも眼光が鋭く、とても怖いのだが。


「では聞き方を変えます。アダム様は好きな女性はおりますか?」

「え?い、いや?居ないけど」


 と言うか、真の裏切り者は孤高であるべきだと思っているのだ。

 そりゃ、性欲はある、必要なら篭絡する為にそう言う事も必要かもとは思っている。

 だけど、それと、女性の好き嫌いは関係ない。


「どうしてそんな事を?」


 もしかして俺に惚れているのか?そんな訳無いな。

 だって、今も俺を滅茶苦茶睨んでるし。


「では、私の事は女性としてどうですか?」


「それは素敵だと思うよ。仕事もしっかりこなしてくれるしね」


 何だろうか、少しずつ近寄ってくるのだけれど。

 と言うか、彼女に対しては篭絡する必要が無い・・・なんせ『え!まさか!なんでアダム様が!!』と言う役なのだから。恋仲になる必要は特に無いのだ。


 カチャリとメガネを外すカルマ。

 あれ?彼女目が悪いから普段メガネをかけているのでは?


「アダム様?」

「どうしたんだい?メガネなんか外して」


 ちょっと眼光が鋭すぎるので止めて欲しいのだけれど。

 めっちゃ近いし。


――あぁそう言う事か!!



 なんでカルマがこんな事をしたのか思い当たった俺は、引き出しから一個の箱を取り出す。

 そう言えば渡し忘れてたな。多分、これを忘れていると言いたかったのだろう。


 顔を真っ赤にして近寄ってくる彼女に、箱から取り出したあるものを掛ける。


 え?と驚いて離れるカルマ。

 ん?これじゃなかったか?


「いや、忘れていたよ。この前誕生日だったろう」

「そ、そうですが、これは?」


「メガネだ。似合うと思ってね」


 こういう細かなプレゼント作戦で好感度を上げて信頼を勝ち取るのだ。

 ふふっ。大分喜んでくれているみたいだ。


 カチャっとメガネを外してジッと眺めているカルマ。

 心なしか嬉しそうに微笑んでいる。


「ありがとうございます。アダム様・・・こんな素敵な物をプレゼントして頂けるなんて」


 うん。さっきより怖くない。


「いや、気にしないでくれ。いつもカルマには世話になっているからね」

「いえ。では私もアダム様のお誕生日には素敵なプレゼントをご用意しますね」


 おおそれは嬉しい。

 出来ればお金が良いな。

 するりとカルマが俺の肩に手を置く。


「アダム様」


 何だろう・・・急にこう『ヤッちゃうよ』みたいに俺を見つめてくるのだけれど。

 カルマは意外と力が強いので、がっしりと肩を掴まれていて滅茶苦茶怖いのだ。


 徐々に近寄ってくるカルマ。

 え?

 もしかしてだけど・・・キスしようとしてない?



 すぐそこまで迫ってくるカルマ。

 逃げられない俺。


 少し顔を赤くしたカルマの唇が触れる直前。

 コンコンと扉をノックする音が響く。


 バッと離れる俺とカルマ。

 あぶねぇ!!

 理性に負けるところだった!!


「失礼するぞ」と言って入ってきたのはカメリア団長で、手には俺の私物であるローブを持っていた。


 どうやら訓練所に忘れていたみたいだ。

 だが、助かった。


「あぁ忘れていたみたいだ。ありがとうカメリア団長」

「ん?・・・あぁ」


 何故か一瞬カルマを見てすごく気まずそうにしたカメリアだったが、直ぐに元の調子に戻って俺にローブを手渡す。カルマは何事も無いかの様に無表情に戻っていてさっきまでの『ヤッちゃう』ような感じが消えていた。


 それにしても本当に助かった。

 あのままだと、多分カルマとキスしてただろうし・・・危ない。

 彼女と恋人になるのは無理だ。綺麗で美人だが、後々裏切る俺と恋人になってしまえば彼女にあらぬ疑いが掛かるだろうし、何よりも俺は孤高に生きたい。


 なんか、カメリアとカルマが互いに見つめ合って無言の会話をしているけれど。

 今回は本当にカメリアに助けられた。



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