十二話 オルトロス攻防戦―終
城に戻った。
お部屋なう。
なんちゃって。
一人で執務室の椅子に座りながらボケてみた。
だけど、今回はかなり危なかった。もしかしたら普通に捕まってたかも知れないからね。
「それにしても、ノエル嬢を何とか味方にしたいなぁ」
一応助けたんだし、これを口実に何とかクレバス王国に行けないだろうか?行った後はノエル嬢を口説いてメロメロにして・・・確かそんな本を前世で見た気がする。
何だったか?あ、そうそう『誰でも簡単メス堕ちナンパ術※但しイケメンに限る』だったな。
裏切る仕込みは帝国の人間がいない場所がいいよね。
コンコンと扉をノックする音が響く。
慌てて姿勢を正して「どうぞ」と告げると部屋に入ってくる男性。
この国でも希少な男性大臣補佐のユーリ君だ。ちなみにユーリ君としか覚えてない。
優男の彼は財務大臣の補佐をしている。
何度か給料交渉を彼にしてもらったけど補佐なので彼では給料は上げられないらしい。
「失礼します。ん?服が汚れていますが、外出していたのですか?」
「あぁ。少し散歩にね。それで何かあったのかい?」
口が避けても奴隷を買いに行ったとは言えない。
「そうですか?あの、こちらをお持ちしました」
書類を机に置くユーリ。
軍務の予算案か。どれどれ、ふむ。
「予算を上げてくれたみたいだね」
「えぇ。騎士団長からの後押しもありましたので」
つまり彼女にお願いすれば給料アップ出来るのでは?だって、あの堅物大臣を説得したんだろ?
検討する価値があるな。
ジーッと予算案を眺めながら、給料アップ作戦について考えていたら、不思議に思ったのかユーリが首をかしげる。
「あの、どうされましたか?」
「いや、何でもないさ」
「そうですか?では、書類確かにお渡ししましたよ」
ペコリとお辞儀しながら念押しして部屋を出ていく。
問題はどうやってカメリア団長を騙して大臣に説得してもらうかだな。やはり彼女の様な人望の厚い人からの後押しが必要だったのだ。
ユーリ君も優男だし人望はありそうなのだけれど。
顔もいいし。俺と違って。
やはり強さか?
この国の女性は皆強いし。
ユーリ君も俺と同じくらい戦闘方面に関しては強くなかったと思う。
俺も訓練したし強くなったからお願いしてみようかな?
いや
「弱いか」
俺そんな強くないんだよね。悲しい事に。
「何がですか?」
ビクンと肩を震わせ慌てて顔を上げる。
足音が無かった・・・相変わらず怖すぎる。
何時の間にか、カルマが首を傾げて立っていた。
カメリア団長とノエル嬢もいて、皆着替えていて綺麗な格好をしていた。
「いや、何でもないよ。それでどうしたのかな?」
絶対に奴隷を買いに行ったことがバレないようにしないと。
あ、でもノエル嬢がいるから無理かも。
「先程のオルトロス討伐について御報告をしたいと思いまして」
「あ、あぁ。既に聞いているよ。大変だったそうだね」
上手く話を合わせてくれノエル嬢!!
「はい。それはもう色々と・・・先ずオルトロスについては幹部2名の捕縛が完了しました」
何か含みのある言い方をするカルマ。
ため息をついているカメリア団長。
大丈夫。まだバレてない、バレてないよね?そうだと良いな?
「そうか。ご苦労さま」
「はい。それでノエル嬢についてですがお聞きしたい事が」「まった!」
手でカルマの発言を制する。
ノエル嬢の話を始めたら絶対にボロが出る気がする。ならば!!
腕を組み、冷静な雰囲気を出しながら笑う。
「少し用が出来てね・・・ノエル嬢、お願いがあるんだ」
含みを持たせて笑う。
何故かゴクリと唾を飲むノエル。
疑問に思いつつも、俺は努めて冷静に見つめる。
「ノエル嬢。俺をクレバス王国に案内してくれないかい?」
「っ!?ど、どういう事ですか?」
驚愕するノエル。
息を呑むカメリアとカルマ。
何でそんなに驚いているのだろうか。
「何、少し観光にね。これは大臣としてではなく、只のアダム・グローエンとしてのお願いだ」
「それは構いませんが」
チラリと二人を見るノエル。
ふむ。ついでだ。この際お願いしてみよう。
「と言うわけで、彼女と暫くクレバス王国に向かうので、二人には一つお願いがあるんだ」
「何でしょうか?」
「二人・・・というかカメリア団長にお願いがある。財務大臣に全員の給料交渉をお願いしてくれ」
俺のと言うと角が立つからマイルドに告げる。
多分頭の良い彼女なら俺の給料アップだと気付く筈だ。
「何故それを私にお願いするんだ?財務補佐のユーリに頼めば良いのでは?」
「何、団長の様な真面目な人なら正しい評価をするだろうからね」
ニヒルに笑う俺。
何を言い出したんだ?と戸惑う2人。
うん。
多分誤魔化せただろう。
「さて、と言うわけだから急ぎ支度をしないとなので、すまないがノエル嬢について聞きたい事は後で聞くとするよ」
まぁ聞かれても誤魔化すけどね。
「そう言うことですか。畏まりました」
ペコリとお辞儀するカルマ。
なんか、勝手に納得してくれた。
さて、今回の裏切り者プレイは半分失敗だったし次こそは成功させなければ。




