第96話 魔王城
黒い空。
天を突くようにそびえる巨大な城。
魔王城。
世界中の恐怖の象徴。
りょうたちは、その門の前へたどり着いた。
重厚な城門は、まるで彼らを待っていたかのように、ひとりでに開いていく。
ゴゴゴゴゴ……。
誰も迎えに来ない。
兵士もいない。
静寂だけが城を包んでいた。
りょうは黒耀を握る。
「……罠か。」
ガイウスは首を横に振る。
「違う。」
「魔王は待っておる。」
「最後の戦いをな。」
玉座の間。
長い赤い絨毯の先。
黒い玉座に、一人の男が座っていた。
漆黒のローブ。
白髪。
年老いているようにも見えるが、その瞳だけは燃えるような紅だった。
男はゆっくりと立ち上がる。
「ようこそ。」
「勇者。」
その声は、不思議なほど穏やかだった。
りょうは剣を抜く。
「お前が魔王か。」
魔王は静かにうなずく。
「ああ。」
「長かった。」
「本当に、長かった。」
その言葉には、戦いを楽しむような響きはなかった。
どこか疲れ切った老人のようだった。
紗耶は違和感を覚える。
「……あなた。」
「本当に世界を滅ぼしたいの?」
魔王は少しだけ笑った。
「そう思われても仕方あるまい。」
「私は、多くの命を奪った。」
「許されることではない。」
「だが。」
魔王はゆっくりとりょうを見つめる。
「お前には知る資格がある。」
魔王は玉座から降りる。
「この世界は、およそ千年ごとに一度。」
「星の厄災が訪れる。」
ルナの身体がわずかに震えた。
「星の……厄災?」
魔王は静かに頷く。
「あれは生命そのものを喰らう存在。」
「人も魔族も区別しない。」
「世界を終わらせる災厄だ。」
ガイウスの顔色が変わる。
「……伝説は本当だったのか。」
魔王は続ける。
「私は止めようとした。」
「人間にも協力を求めた。」
「だが。」
「誰も信じなかった。」
「だから私は。」
「恐怖で世界を一つにしようとした。」
りょうは拳を握る。
「だからって!」
「罪のない人を傷つけていい理由にはならない!」
魔王は静かに目を閉じる。
「ああ。」
「その通りだ。」
「私は間違えた。」
「だから。」
「お前に託す。」
その瞬間。
魔王の全身から、漆黒の魔力があふれ出す。
「来い。」
「勇者。」
「私を超えろ。」
「そして。」
「新しい時代を作れ。」
玉座の間が震え始める。
漆黒の魔力が渦を巻き、世界を揺らす。
りょうは黒耀を構えた。
紗耶は剣を抜く。
アリシアは杖を掲げる。
ルナの胸に、星の紋章が輝き始めた。
ガイウスは静かに剣を構える。
「始まるぞ。」
勇者。
未来の魔王。
星の子。
世界の運命を決める最後の戦いが、ついに幕を開けた。




