第95話 四天王ノクス、最後の願い
純白の世界。
ノクスは静かに杖を構えた。
「勇者りょう。」
「これが、四天王第三席としての最後の務めです。」
りょうも黒耀を構える。
「……行くぞ。」
紗耶とアリシア、ルナも戦う構えを見せる。
しかし、ノクスは首を横に振った。
「いいえ。」
「この戦いは、あなた一人で。」
「勇者としてではなく、一人の人間として乗り越えてください。」
りょうは一歩前へ出る。
「分かった。」
「受けて立つ。」
ノクスは微笑んだ。
「ありがとうございます。」
その瞬間、無数の魔法陣が空中に展開される。
炎。
氷。
雷。
風。
光。
闇。
六属性の魔法が一斉に放たれた。
りょうは黒耀で次々と斬り払う。
「速い……!」
ノクスは攻撃を続けながらも、急所だけは決して狙わない。
りょうも気付いていた。
(やっぱり……。)
(この人、本気で殺す気はない。)
数十分にも及ぶ激戦。
最後にノクスは杖を高く掲げた。
「これが私の最後の魔法です。」
純白の世界全体が魔法陣となる。
「星導結界。」
優しい光がりょうたちを包んだ。
攻撃魔法ではない。
温かな光だった。
りょうは戸惑う。
「これは……?」
ノクスは穏やかに笑う。
「あなた方を守る祝福です。」
「これから先、魔王様との戦いで一度だけ、あなた方を死から救ってくれるでしょう。」
アリシアは驚く。
「敵なのに……。」
「もう敵ではありません。」
ノクスは静かに答えた。
「私は最後まで四天王でした。」
「ですが今は、一人の人間として未来を託します。」
ノクスは杖を地面に置き、膝をつく。
「私の負けです。」
りょうは剣を納めた。
「ありがとう。」
「全部話してくれて。」
ノクスは少し照れくさそうに笑った。
「あなたなら……。」
「最初の勇者とは違う結末を迎えられる。」
その時、純白の世界が崩れ始める。
「時間です。」
ノクスは立ち上がり、最後にルナへ視線を向けた。
「星の子。」
「あなたが、この世界最後の希望です。」
ルナは力強くうなずく。
「うん!」
「みんなで世界を守る!」
景色が消えていく。
ノクスの姿も光になり始めた。
「勇者りょう。」
「もし……。」
「本当に魔王になってしまっても。」
りょうは静かに頷く。
「安心しろ。」
「俺は、一人じゃない。」
紗耶がりょうの手を握る。
アリシアも隣に立つ。
ルナは笑顔で抱きついた。
その光景を見て、ノクスは心から安堵したように微笑む。
「……ええ。」
「だから、あなたなら大丈夫です。」
光が弾ける。
純白の世界は消え去り、元の街道へ戻ってきた。
そこにはもう、ノクスの姿はなかった。
地面には、白い仮面だけが静かに残されていた。
りょうはその仮面を拾い上げる。
「必ず終わらせる。」
「お前が願った未来を。」
そして一行は、魔王城へ向かって歩き出す。
その先には、世界の真実と、運命を変える最後の戦いが待っていた。




