第93話 第二の試練――守れなかった未来
純白の世界に、二つ目の扉が現れる。
ノクスは静かに告げた。
「第二の試練です。」
「勇者。」
「あなたが最も恐れている未来を見せます。」
扉がゆっくりと開いた。
次の瞬間。
りょうたちは戦場に立っていた。
空は赤く染まり、大地は燃えている。
王都アルカディアは崩れ落ち、至る所で炎が上がっていた。
「な……。」
りょうの顔から血の気が引く。
「王都が……。」
瓦礫の中から聞き覚えのある声がした。
「りょう……。」
振り向くと、アリシアが倒れていた。
杖は折れ、服は血に染まっている。
「ごめんなさい……。」
「守れませんでした……。」
その姿は光となって消えた。
「アリシア!!」
りょうは叫ぶ。
だが届かない。
さらに先では、ルナが一人で泣いていた。
「怖いよ……。」
「みんな、どこ?」
りょうが駆け寄ろうとした瞬間、ルナの姿も霧のように消えた。
「ルナ!」
最後に見えたのは紗耶だった。
ボロボロになりながら、それでも笑っている。
「りょう。」
「泣かないで。」
「あなたは……最後まで戦ったよ。」
りょうは首を振る。
「違う!」
「そんな未来、認めない!」
紗耶は優しく笑う。
「もし、本当にこうなったら?」
その一言に、りょうは言葉を失った。
世界にノクスの声が響く。
「勇者。」
「誰も救えない未来でも。」
「あなたは立ち上がれますか?」
長い沈黙が流れる。
りょうは目を閉じた。
拳を強く握る。
そしてゆっくりと顔を上げた。
「……立ち上がる。」
「たとえ一人になっても。」
「仲間が命を懸けて守った未来なら。」
「俺は絶対に諦めない。」
「でも。」
その声は力強くなる。
「そんな未来には、絶対させない!」
燃えていた王都が光に包まれる。
崩れていた建物が消え、景色は再び純白の世界へ戻った。
ノクスは静かにうなずく。
「……見事です。」
「絶望を見ても、希望を捨てなかった。」
「あなたなら。」
そこで言葉を切る。
「いえ。」
「まだ早いですね。」
りょうは一歩前へ出る。
「ノクス。」
「お前は何を知ってる?」
ノクスは答えない。
ただ、三つ目の扉へ視線を向けた。
「最後の試練です。」
「これを越えた時。」
「私は、あなたに真実の一部を話しましょう。」
純白の空間に現れた最後の扉は、それまでとは違って漆黒に染まっていた。
その奥からは、黒耀の鼓動によく似た音が響いている。
ドクン。
ドクン。
りょうはその音に導かれるように、静かに扉へ手を伸ばした。




