第91話 仮面の四天王
魔王城へ続く街道。
空は鉛色の雲に覆われ、風が不気味に鳴いていた。
りょうたちは警戒しながら歩みを進める。
すると。
「ここまでです。」
静かな声が響いた。
街道の中央。
黒いローブをまとい、白い仮面をつけた男が立っていた。
四天王第三席――ノクス。
りょうは黒耀を抜く。
「やっぱり、お前が来たか。」
ノクスは小さく頷く。
「これが私の役目です。」
「勇者。」
「ここから先へは通せません。」
紗耶が一歩前へ出る。
「本当に戦わなきゃいけないの?」
ノクスは少しだけ視線を伏せた。
「……はい。」
「私は四天王です。」
「魔王様の命令には従います。」
そう答えながらも、その声には迷いがあった。
りょうは剣先を下げた。
「なら、一つだけ聞く。」
「お前は、人間を憎んでるのか?」
沈黙。
長い沈黙。
やがてノクスは静かに答えた。
「……いいえ。」
「では魔王に世界を滅ぼしてほしいのか?」
ノクスは首を横に振る。
「それも違います。」
「じゃあ、どうして!」
りょうの叫びが響く。
ノクスは仮面の奥で目を閉じる。
「今は言えません。」
「ですが。」
「いつか必ず、あなたは知ります。」
「その時。」
「私を恨んでも構いません。」
りょうは深く息を吸う。
「……分かった。」
黒耀を構える。
「だったら。」
「お前を倒して、その理由を聞く。」
黒マントを翻す。
「聞けぇぇぇ!!」
「我が名は!」
「漆黒の覇王・神崎りょう!!」
「勝負だ!」
ノクスも静かに杖を構えた。
「勇者。」
「あなたの覚悟、確かに受け取りました。」
黒い魔力が辺りを包む。
「幻影世界。」
景色が歪む。
街道が消えた。
森も空も消えた。
気付けば、りょうたちは真っ白な世界に立っていた。
「ここは……?」
アリシアが周囲を見回す。
紗耶も驚きを隠せない。
「幻術……?」
ノクスの声だけが響く。
「ここでは、あなた方の五感は私の支配下です。」
「ですが安心してください。」
「命を奪う術ではありません。」
りょうは眉をひそめた。
「殺す気がないのか?」
「……ええ。」
「私が試したいのは。」
ノクスはゆっくりと言葉を続ける。
「あなたの心です。」
その言葉とともに、純白の世界に無数の黒い扉が現れた。
「この先にあるものを乗り越えられたなら。」
「あなたは、魔王様と戦う資格を得るでしょう。」
りょうは黒耀を握り直す。
「資格なんて、自分でつかみ取る。」
ノクスは、仮面の奥でほんのわずかに微笑んだ。
「その言葉を待っていました。」
そして、一つ目の扉がゆっくりと開き始めた。




