第90話 最後の四天王
黒曜平原から戻った翌日。
王城には、第一席バルガスが敗北を認めたという知らせが各国へ広まっていた。
人々は歓喜した。
「これで四天王は残り一人!」
「もうすぐ平和だ!」
「勇者様なら魔王も倒せる!」
しかし――。
その歓声とは裏腹に、ノクスは魔王城へ戻っていた。
魔王城・玉座の間。
巨大な玉座に、魔王が静かに座っている。
「ノクス。」
「第一も第二も敗れたか。」
「はい。」
「第三は?」
ノクスは静かに頭を下げる。
「……私でございます。」
「ならば。」
魔王の紅い瞳が細くなる。
「最後の四天王として迎え撃て。」
ノクスは一瞬だけ沈黙した。
「……承知しました。」
魔王城を出たノクスは、誰もいない廊下で足を止める。
仮面を外しかけ、しかし途中で止めた。
「これでいい。」
「私は最後まで、あなたを導く。」
誰に向けた言葉なのか。
その答えを知る者はいない。
一方、王都。
ガイウスはりょうたちを訓練場へ集めた。
「これから向かう相手は、第三席ノクス。」
「お前たちも知っている通り、幻術と策謀を得意とする男じゃ。」
りょうは頷く。
「ああ。」
「でも……。」
「ノクスって、本当に悪いやつなのかな。」
ガイウスは少し驚いた。
「なぜそう思う?」
「なんとなく。」
「戦ってても、殺そうって感じがしなかった。」
紗耶も静かにうなずく。
「私も同じことを思ってた。」
アリシアも続ける。
「何かを隠しているように見えます。」
その夜。
ノクスは一人、魔王城の屋上に立っていた。
満天の星を見上げる。
「勇者。」
「次は私と戦うことになります。」
「ですが。」
「私は、あなたを殺す気はありません。」
静かに拳を握る。
「あなたには……。」
「魔王を止めてもらわなければならない。」
風がローブを揺らす。
その仮面の奥には、決意と覚悟が宿っていた。
同じ頃。
りょうは眠れずにいた。
黒耀を見つめる。
あの日から、ときどき聞こえる鼓動。
ドクン。
「……またか。」
右手で柄を握ると、鼓動は静かに消えた。
「お前、一体何なんだ。」
黒耀は何も答えない。
ただ月明かりを反射し、静かに輝いていた。
翌朝。
王都の門が開く。
りょうたちは、魔王城への最後の旅に出る。
その先で待つのは、最後の四天王ノクス。
そして――
人類を滅ぼそうとする魔王。
世界の運命を決める戦いが、いよいよ幕を開けようとしていた。




