第85話 《共鳴》覚醒
銀色の斬撃――鋼皇断界。
大地を裂きながら、りょうへ迫る。
誰も間に合わない。
紗耶も。
アリシアも。
ガイウスも。
ただ見つめることしかできなかった。
その瞬間。
黒耀が激しく輝く。
ドクン!!
りょうの全身に黒い紋様が走る。
右腕を覆っていた漆黒は、肩へ、胸へ、脚へと広がっていく。
黒い粒子が舞い上がり、まるで鎧を形作るように集まっていく。
「う……あああああっ!!」
りょうの叫びが戦場に響く。
漆黒の鎧が、ゆっくりとその身を覆った。
胸当て。
籠手。
脚甲。
そして黒いマントは、以前より長く、禍々しく風になびく。
瞳は漆黒の中に紅い光を宿していた。
「りょう……?」
紗耶が息をのむ。
アリシアは震える声でつぶやく。
「これが……共鳴……。」
ガイウスでさえ、言葉を失っていた。
「初めて見る……。」
アイゼンの斬撃が到達する。
だが。
りょうは片手を伸ばした。
バキィィィン!!
鋼皇断界が、素手で砕かれた。
戦場が静まり返る。
兵士たちも息をするのを忘れていた。
アイゼンは初めて驚きの表情を浮かべる。
「……そうか。」
「それが、お前の真の力か。」
りょうは答えない。
ゆっくりと黒耀を握る。
黒耀は今までとは比べ物にならないほどの魔力をまとっていた。
一歩。
それだけで地面が砕ける。
アイゼンが迎え撃つ。
「来い!」
大剣を振り下ろす。
だが。
ギィィィン!!
りょうは黒耀で受け止めた。
しかも、微動だにしない。
アイゼンは笑った。
「ハハッ!」
「これだ!」
「私は、この瞬間を待っていた!」
全力で剣を振るう。
りょうも剣を振るう。
二人の一撃が激突する。
ズガァァァァン!!
衝撃だけで城門が崩れ落ちた。
りょうは低い声でつぶやく。
「終わりだ。」
今までの優しい声ではない。
感情を押し殺したような冷たい声。
紗耶は胸騒ぎを覚えた。
「……りょう?」
黒耀が漆黒の光を放つ。
「黒耀・滅界斬。」
一閃。
静かな一太刀。
次の瞬間。
アイゼンの鋼の鎧に一本の線が走る。
パキッ……。
鋼化した鎧が砕け散った。
アイゼンは膝をつく。
「見事……だ。」
勝負は決した。
しかし。
りょうは剣を下ろさない。
ゆっくりとアイゼンへ近づいていく。
その瞳には、勝者の喜びがなかった。
ただ、戦いを終わらせるためだけの冷たい光が宿っていた。
塔の上で見守るノクスは、静かに目を閉じる。
そして、誰にも聞こえない声でつぶやく。
「……これで。」
「事は成った。」
その言葉には、勝利の喜びではなく、避けられない運命への悲しみが込められていた。




