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異世界と厨二病  作者: シュレディンガー


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第84話 限界の先へ

荒れ果てた戦場。


城門の前には無数の剣跡が刻まれていた。


りょうは満身創痍だった。


肩で息をし、黒耀を杖代わりにして立っている。


アリシアの回復魔法も、もう傷を完全には癒せない。


「魔力が……足りません。」


紗耶も膝をついていた。


《クローズドクロック》を何度も使った反動で、額から汗が流れる。


アイゼンは静かに二人を見つめる。


「ここまで耐えたか。」


「勇者。」


「そして時間を操る少女。」


「見事だ。」


その声に嘲笑はなかった。


純粋な敬意だけがあった。


りょうはゆっくり黒耀を構える。


「まだ……終わってない。」


アイゼンは頷く。


「ならば。」


「最後の一撃で決めよう。」


巨大な魔力が大剣へ集まる。


城壁が震え始めた。


兵士たちが慌てて避難する。


「将軍が奥義を……!」


「巻き込まれるぞ!」


ガイウスの表情が険しくなる。


「あれはまずい。」


「あの一撃は、王都の城門すら両断する。」


アリシアは息をのむ。


「防げません……。」


りょうは黒耀を握る。


(終わる。)


(このままじゃ、みんなが……。)


黒耀が激しく脈打つ。


ドクン。


ドクン。


まるで「力を使え」と囁くように。


しかし、その声に気づくのは、塔の上のノクスだけだった。


彼は仮面を押さえ、小さく首を振る。


「駄目です……。」


「勇者。」


「今、その力を受け入れれば……。」


彼は最後まで言葉を飲み込んだ。


アイゼンは大剣を天へ掲げる。


「これで終わりだ。」


鋼皇断界こうおうだんかい!!」


銀色の斬撃が大地を裂きながら迫る。


りょうは一歩も退かない。


黒耀を正面に構える。


「みんなは……。」


「俺が守る!」


その瞬間――


黒耀が今までで最も強く脈打った。


ドクンッ!!


漆黒の光が剣からあふれ出す。


りょうの右腕を黒い光が包み始めた。


紗耶が目を見開く。


「りょう……?」


アリシアも異変に気づく。


「その腕……!」


ガイウスは剣を握りしめた。


「まさか……。」


そして、ノクスだけが静かに目を閉じる。


「……来てしまいましたか。」


「《共鳴》。」


漆黒の光は腕から肩へとゆっくり広がっていく。


りょう自身はまだ、その意味を知らない。


だが運命は、ついに動き始めていた。


次の瞬間、《共鳴》が完全に覚醒しようとしていた。

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