第81話 鋼鉄将軍の圧倒的な力
城門前。
冷たい風が吹き抜ける。
アイゼンはゆっくりと大剣を構えた。
「勇者。」
「全力で来い。」
「中途半端な覚悟なら、ここで終わる。」
りょうは黒耀を握り締める。
「望むところだ!」
黒マントを翻す。
「聞けぇぇぇ!!」
「我が名は!」
「漆黒の覇王・神崎りょう!!」
「行くぞ!」
「黒影・雷牙斬!!」
黒耀が一直線にアイゼンへ走る。
ガキィィィィン!!
アイゼンは片手で受け止めた。
「なっ……!」
りょうは目を見開く。
本気の一撃だった。
それを片手で止められた。
アイゼンは静かに言う。
「速くなった。」
「重くもなった。」
「だが。」
「まだ浅い。」
ドォン!!
大剣が振るわれる。
りょうは受け止める。
しかし。
「ぐあっ!」
黒耀ごと吹き飛ばされる。
地面を何度も転がり、ようやく止まった。
アリシアがすぐに回復魔法をかける。
「りょう!」
「ありがとう!」
紗耶が魔法を放つ。
「氷結拘束!」
無数の氷柱がアイゼンを包む。
しかし。
「甘い。」
バキィン!!
魔力ごと砕かれた。
「そんな……。」
アイゼンは紗耶を見る。
「お前の時間停止は脅威だ。」
「だからこそ。」
「常に最悪を想定して戦っている。」
紗耶は静かに息を吸う。
――《クローズドクロック》発動。
世界が止まる。
アイゼンの周囲を歩く。
(弱点を……。)
だが。
鎧。
筋肉。
姿勢。
どこにも隙がない。
「……ない。」
時間を戻す。
アイゼンは紗耶を見た。
「見つからなかったか。」
紗耶は驚く。
「どうして……。」
「お前の表情を見れば分かる。」
「時間を止めても、私には致命的な隙がない。」
りょうは再び立ち上がる。
「まだだ!」
「黒耀・双影斬!!」
二重の斬撃が走る。
アイゼンは正面から受け止める。
ズガァン!!
爆煙が上がる。
煙が晴れる。
アイゼンは無傷だった。
「嘘だろ……。」
りょうの声が震える。
ガイウスは目を閉じた。
「今のお前では届かん。」
その一言が胸に刺さる。
アイゼンは大剣を肩に担ぐ。
「勇者。」
「失望はしていない。」
「むしろ期待以上だ。」
「だからこそ。」
「ここで終わらせる。」
銀色の魔力が噴き上がる。
鋼鉄将軍最大奥義――鋼化。
鎧だけでなく、その肉体までも鋼鉄へと変わっていく。
大地が震えるほどの魔力が解き放たれた。
塔の上。
ノクスはその姿を見つめる。
「始まりましたか……。」
彼の視線はアイゼンではなく、りょうへ向いている。
「勇者。」
「ここから先が、本当の試練です。」
黒耀が低く脈動する。
まだ誰にも聞こえない。
まるで心臓の鼓動のような音が、りょうの手の中から響き始めていた。




