第80話 鋼鉄要塞グランヴァルト
三日後。
黒い山脈の中心。
巨大な城壁が天を覆う。
鋼鉄要塞グランヴァルト。
無数の砲台。
幾重にも重なる城壁。
そして、門の前には整然と並ぶ魔王軍。
りょうは息をのんだ。
「……でかい。」
ガイウスが静かに言う。
「ここが鋼鉄将軍の城じゃ。」
りょうたちは正門へ歩いていく。
魔王軍の兵士たちが武器を構えた。
しかし、その時。
巨大な門がゆっくり開く。
ゴゴゴゴゴ……。
門の奥から、一人の男が歩いてくる。
銀色の鎧。
巨大な大剣。
四天王第二席――鋼鉄将軍アイゼン。
兵士たちは一斉に道を開けた。
アイゼンはりょうを見据える。
「勇者。」
「約束通り来たな。」
りょうは黒耀を抜く。
黒マントを翻す。
「聞けぇぇぇ!!」
「我が名は!」
「漆黒の覇王・神崎りょう!!」
「今日は、お前を超える!」
アイゼンは小さく笑った。
「その意気や良し。」
しかし。
アイゼンは大剣を地面へ突き立てる。
「だが、その前に。」
「私の部下を倒してもらおう。」
城門の左右から、四人の魔族が現れる。
「将軍直属四隊長だ。」
一人は双剣使い。
一人は槍使い。
一人は重戦士。
そして一人は魔法剣士。
「勇者に実力を示せ。」
アイゼンは静かに命じた。
りょうはニヤリと笑う。
「いいぜ。」
「全員まとめて来い!」
「威勢だけは一人前だ。」
双剣使いが飛び出す。
その瞬間。
紗耶が前へ出た。
――《クローズドクロック》発動。
世界が静止する。
紗耶は四人の武器を巧みにずらし、それぞれの足元に魔法陣を描く。
時間が動き出す。
「えっ!?」
四人は同時に体勢を崩した。
「今!」
りょうが駆ける。
「黒影・閃牙連撃!!」
四連撃が炸裂。
四隊長は一斉に武器を弾き飛ばされ、膝をついた。
アイゼンはその光景を見ても表情を変えない。
「見事だ。」
「隊長たち。」
「下がれ。」
四人は悔しそうに頭を下げ、要塞へ戻っていく。
アイゼンは再び大剣を構えた。
「これで邪魔はない。」
「勇者。」
「一対一だ。」
りょうは首を横に振る。
「違う。」
「俺たちは仲間と戦う。」
アイゼンは静かにうなずく。
「そうだったな。」
「ならば訂正しよう。」
大剣を肩に担ぐ。
「勇者一行。」
「私が相手をする。」
その瞬間。
空気が変わる。
ガイウスが低くつぶやく。
「来るぞ……。」
紗耶も、アリシアも、ルナも武器を構える。
ノクスは遠く離れた塔の上から、その戦いを静かに見つめていた。
仮面の奥で、誰にも聞こえないほど小さくつぶやく。
「……どうか。」
「まだ、目覚めないでください。」
黒耀が静かに震える。
まだ誰も知らない《共鳴》が、少しずつ目を覚まし始めていた。




