第7話 魔王討伐の勅命
魔法都市アルカディアに滞在して数週間。
ある日、一通の召集状が届いた。
王国の紋章が刻まれた封筒だった。
「王城への出頭命令?」
りょうは首をかしげる。
ガイウスは静かに頷いた。
「ついに来たか。」
王都へ戻ると、謁見の間には国王と重臣たちが待っていた。
「勇者候補、神崎りょう。」
「勇者候補、結城紗耶。」
二人はひざまずく。
国王は静かに立ち上がった。
「魔王軍の侵攻が始まった。」
広げられた地図には、各地の町が赤く染められている。
「村が三つ滅びた。」
「砦も一つ落ちた。」
重い空気が流れた。
「魔王は魔王城から動かぬ。」
「だが、その配下――四天王が各地で軍を率いている。」
国王は四枚の肖像画を机に並べた。
「炎獄将軍バルガス。」
巨大な戦斧を担ぐ赤い鎧の男。
「氷魔導師イゼル。」
冷たい瞳をした魔族の女性。
「幻影卿ノクス。」
仮面をつけた細身の男。
「そして――」
最後の一枚。
黒い甲冑に身を包んだ騎士。
「魔剣将ゼノン。」
国王の声がわずかに低くなる。
「四天王最強。」
「魔王軍最高戦力だ。」
「諸君らに命じる。」
「四天王を討ち、魔王への道を切り開け。」
「そして――魔王を討て。」
謁見の間に緊張が走る。
りょうは思わず息をのんだ。
(本当に……魔王と戦うんだ。)
異世界に来た頃は、冒険に胸を躍らせていた。
だが今は違う。
これは現実だ。
負ければ、人が死ぬ。
自分たちも死ぬ。
謁見が終わり、王城を出る。
紗耶が小さく息を吐いた。
「怖い?」
りょうは少し考えて答えた。
「……怖い。」
「でも。」
拳を握る。
「逃げたくはない。」
紗耶は微笑んだ。
「私も。」
その夜。
ガイウスは二人を見て言った。
「四天王は今までの敵とは比べものにならん。」
「特に第一の四天王、バルガス。」
「真正面から戦えば、一流の騎士団でも壊滅する。」
りょうはごくりと唾を飲む。
「そんなに強いのか。」
「ああ。」
「今のお前では、一太刀も届かん。」
その言葉は厳しかった。
だが、りょうはうつむかなかった。
「じゃあ。」
「届くようになります。」
ガイウスは少しだけ笑う。
「その意気だ。」
翌朝。
王都の門の前。
大きな荷物を背負ったりょうと紗耶が立っていた。
「行こう。」
紗耶が言う。
「ああ。」
りょうは大きくうなずいた。
「魔王を倒しに。」
二人は並んで歩き出す。
その先に待つのは、四天王との過酷な戦い。




