第6話 魔法都市アルカディア
旅を始めて三か月。
二人は大陸最大級の魔法都市、アルカディアへたどり着いた。
街のあちこちに魔法灯が灯り、本を浮かせて運ぶ魔導具が空を飛ぶ。
「すげぇ……。」
りょうは目を輝かせた。
「異世界って感じだ!」
紗耶も珍しく目を丸くする。
「こんな街があるんだ。」
ガイウスは笑った。
「ここなら魔法を学べる。」
「努力する者には、誰にでも門戸は開かれておる。」
二人は魔導図書館へ向かった。
そこで魔導師から説明を受ける。
「固有能力は授かるもの。」
「ですが魔法は知識です。」
「才能に差はありますが、誰でも習得できます。」
りょうは身を乗り出した。
「俺でも?」
「もちろん。」
その言葉に、少しだけ希望が湧いた。
それからの日々。
紗耶は驚異的な速さで魔法を覚えていく。
火球。
風刃。
氷槍。
結界。
魔力操作も一流だった。
教師は驚く。
「……こんな生徒は初めて見た。」
「時間停止だけではなく、魔法の才能まで。」
「天才だ。」
一方、りょう。
「火球!」
ボフッ。
煙だけ。
「もう一回!」
小さな火の玉が飛び、途中で消えた。
「……。」
教師は困ったように笑う。
「魔力は少ないですね。」
「ですが、諦めなければ必ず成長します。」
りょうは笑顔を作った。
「はい!」
夕方。
紗耶は新しい魔導書を買っていた。
「次は回復魔法を勉強しようかな。」
「へぇ。」
「それと身体強化。」
「へぇ……。」
「どうしたの?」
「いや。」
りょうは笑った。
「すごいなって。」
「紗耶。」
「ありがとう。」
紗耶は素直に笑う。
その笑顔が、今日は少しだけ眩しかった。
夜。
宿の屋上。
りょうは一人で空を見上げる。
「……すごいよな。」
時間停止。
剣術。
そして魔法。
紗耶はどんどん強くなっていく。
自分は。
剣術は少し上達した。
魔法は人並み以下。
能力は火花。
「また置いていかれた。」
胸の奥が苦しくなる。
(昔は一緒だった。)
(何でも隣だった。)
(なのに今は……。)
思わず拳を握る。
「いいよな。」
誰もいない夜空へ向かって呟いた。
「最強の能力もらって。」
「魔法の才能まであって。」
「……俺には何もない。」
その声は震えていた。
嫉妬だった。
そんな自分が嫌だった。
紗耶は努力している。
誰よりも真面目に。
だからこそ、嫉妬する資格なんてない。
それでも心は言う。
「羨ましい。」
その瞬間。
屋上の扉が静かに開いた。
「……りょう。」
紗耶だった。
りょうは慌てて笑顔を作る。
「お、おう。」
「眠れなくてさ。」
紗耶は少しだけりょうの顔を見つめる。
何かを察したようだった。
しかし、あえて何も聞かなかった。
ただ隣に座り、一緒に夜空を眺める。
二人の間に流れる沈黙は、幼い頃とは少しだけ違うものになっていた。




