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異世界と厨二病  作者: シュレディンガー


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第72話 幻影卿の信念

星霊の森の上空。


紫色の魔法陣が何重にも重なり、空を覆う。


その中央に、第四席・大魔道士ゼルグが浮かんでいた。


「ノクス。」


「裏切るつもりか?」


ノクスは首を横に振る。


「違います。」


「私は今も魔王様に忠誠を誓っています。」


「ならば勇者を止めろ。」


「……それはできません。」


ゼルグは大きく笑った。


「相変わらず面倒な男じゃ!」


「では!」


「力づくでどいてもらう!」


無数の魔法陣が展開される。


炎。


雷。


氷。


風。


あらゆる属性の魔法が一斉に放たれた。


ノクスは静かに右手を上げる。


「幻影結界。」


透明な結界が森を包む。


轟音が響く。


ドォォォォン!!


魔法同士がぶつかり合い、大気が震えた。


「勇者!」


ノクスは振り返らず叫ぶ。


「今です!」


「石碑の奥へ!」


りょうはうなずく。


「行こう!」


ルナの手を取り、一行は石碑の奥へ走り出す。


石碑の裏には、地下へ続く古い階段があった。


長い年月、誰も通っていないようだ。


ルナは迷うことなく歩き始める。


「こっち。」


紗耶が驚く。


「思い出したの?」


「少しだけ。」


地下深く。


そこには巨大な円形の部屋があった。


天井には満天の星のような光。


中央には白い水晶。


ルナが近づくと、水晶が淡く輝き始める。


「おかえりなさい。」


女性の優しい声が響いた。


ルナは目を見開く。


「この声……。」


水晶の中に、一人の女性の姿が映し出される。


「私は、この神殿に残された最後の記録。」


「ルナ。」


「あなたを待っていました。」


ルナの瞳から涙がこぼれる。


「お母さん……?」


女性は微笑む。


「いいえ。」


「私はあなたの母ではありません。」


「ですが。」


「あなたを育てた者です。」


りょうたちは静かに話を聞く。


「ルナ。」


「あなたは普通の少女ではありません。」


「『星の巫女』として生まれました。」


「世界の均衡を保つ存在です。」


アリシアが息をのむ。


「やっぱり……。」


女性の表情が少しだけ曇る。


「そして。」


「魔王も勇者も。」


「本当の敵ではありません。」


部屋が静まり返る。


りょうが思わず聞き返す。


「……どういうこと?」


女性は答える。


「この世界には。」


「もっと古く。」


「もっと恐ろしい存在が眠っています。」


その時。


地上から凄まじい爆発音が響いた。


ドォォォォォン!!


神殿全体が揺れる。


紗耶が顔を上げる。


「ノクス!」


一方、地上。


ゼルグの巨大な魔法がノクスを包み込む。


土煙が晴れる。


そこに立っていたノクスのローブは破れ、仮面にも大きな亀裂が入っていた。


しかし彼は倒れない。


「まだ……通しません。」


ゼルグは苦笑した。


「そこまでして勇者を守るか。」


ノクスは静かに答える。


「守っているのは。」


「勇者ではありません。」


「……世界の未来です。」


二人の四天王による激突は、さらに激しさを増していった。

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