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異世界と厨二病  作者: シュレディンガー


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第69話 古代の少女

アルカディアへ戻ると、学院は騒然となった。


「古代文明の生き残りだって!?」


学院長は少女を見るなり、驚きで目を見開いた。


「まさか……封印が解かれる日が来るとは。」


少女は学院の医務室で目を覚ました。


窓から差し込む陽の光を、不思議そうに見つめる。


「きれい……。」


りょうが部屋へ入る。


「調子はどう?」


少女は少し首を傾げた。


「あなたは……。」


「俺は神崎りょう。」


黒マントを軽く翻す。


「漆黒の覇王だ!」


少女はきょとんとしたあと、小さく笑った。


「……変な人。」


部屋の外で聞いていた紗耶が吹き出す。


「初対面の感想がそれなんだ。」


りょうは肩を落とした。


「ひどい!」


アリシアも思わず笑ってしまう。


学院長は少女を診察しながら話す。


「身体に異常はない。」


「ただし。」


「千年以上眠っていた影響か、記憶はほとんど失われておる。」


少女は申し訳なさそうにうつむく。


「ごめんなさい……。」


紗耶が優しく首を振る。


「謝らなくていいよ。」


「そうだ。」


りょうが笑顔になる。


「名前がないと困るよな。」


少女は静かにうなずく。


「……うん。」


「思い出すまでの間だけ。」


「仮の名前を付けよう。」


アリシアが考え込む。


「古代文明にちなんだ名前がいいでしょうか。」


ガイウスは腕を組む。


「本人が気に入る名が一番じゃ。」


少女は少し考えて、小さく言った。


「……ルナ。」


「その名前。」


「なんだか好き。」


りょうは笑顔でうなずいた。


「よし!」


「今日から君はルナだ!」


少女――ルナも、少し照れながら笑った。


「ありがとう。」


その日の夜。


学院長は、りょうたちだけを学院長室へ呼ぶ。


部屋の机には、一冊の古い本が置かれていた。


「ルナについて調べていた。」


ページを開く。


そこには古代文字と、一枚の絵。


巨大な白い塔。


そして、その前に立つ一人の少女。


紗耶が目を細める。


「……ルナ。」


学院長は静かにうなずいた。


「この少女と、よく似ておる。」


さらにページをめくる。


そこに書かれていた一文を読み上げる。


「『星の巫女は、世界の終焉と始まりを見届ける者なり。』」


部屋に沈黙が流れる。


ガイウスが低くつぶやく。


「星の巫女……。」


学院長は本を閉じた。


「もしルナがその人物なら。」


「魔王すら知らぬ、この世界最大の秘密を知る存在かもしれん。」


その頃、魔王城。


玉座の間で魔王は静かに目を閉じていた。


ノクスが報告する。


「古代兵器は停止。」


「少女は勇者一行が保護しました。」


魔王は静かにうなずく。


「そうか。」


その声に驚きも怒りもない。


ただ一言。


「……予定通りだ。」


ノクスはわずかに目を見開く。


「予定通り……?」


魔王は玉座から立ち上がり、夜空を見上げる。


「星の巫女が目覚めた。」


「ならば、物語はようやく始まる。」

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