第66話 黒耀・第二解放
古代兵器の胸に刻まれた紋章が妖しく輝く。
りょうは黒耀を握り締めた。
「まだだ……!」
「もっと力を貸してくれ!」
黒耀が震える。
キィィィン……
まるで剣が、持ち主の覚悟を試すように。
りょうの意識が、一瞬だけ白い世界へ引き込まれた。
そこには一人の剣士が立っていた。
顔は見えない。
しかし、その声は穏やかだった。
「黒耀は力を与える剣ではない。」
「持ち主の覚悟を映す剣だ。」
りょうは静かに答える。
「俺は強くなりたい。」
剣士は首を横に振る。
「違う。」
「何のために。」
その瞬間、りょうの脳裏に浮かぶ。
中学時代。
厨二病だった自分を笑いながら応援してくれた紗耶。
異世界で出会ったアリシア。
厳しく鍛えてくれたガイウス。
助けた村人たち。
港町の子どもたち。
そして、敵でありながら部下を守るアイゼン。
りょうは迷わず答えた。
「みんなを守るためだ。」
黒耀が強く輝く。
「ならば。」
「応えよう。」
現実世界。
黒耀から黒い光があふれ出す。
刀身を包む魔力が、炎のように揺らめく。
古代文字が次々と光り始めた。
ガイウスが叫ぶ。
「来るぞ!」
──黒耀・第二解放。
刀身の周囲に、漆黒の魔力の刃がもう一枚形成される。
一振りで二重の斬撃を放つ形態。
りょうは驚く。
「これが……!」
古代兵器が腕を振り下ろす。
「排除。」
りょうは一歩踏み出した。
「うおおおおっ!!」
「黒耀・双影斬!!」
ズガァァァァン!!
黒い二重の斬撃が交差する。
古代兵器の胸部装甲が大きく裂けた。
「効いた!」
アリシアが笑顔になる。
しかし。
まだ倒れない。
制御核は無傷だった。
古代兵器がさらに魔力を集める。
「最終殲滅……開始。」
空に巨大な魔法陣が現れる。
ガイウスの顔色が変わる。
「まずい!」
「あれを撃たれたら、この山脈ごと消し飛ぶ!」
アイゼンは大剣を地面へ突き刺した。
「勇者!」
「私が止める!」
「でも!」
「迷うな!」
アイゼンは笑った。
「私は四天王。」
「魔王軍最強の盾だ。」
銀色の魔力が爆発する。
「この一撃くらい……!」
「受け止めてみせる!」
りょうは拳を握る。
「絶対に死ぬなよ!」
アイゼンは背中を向けたまま答える。
「勝ったら。」
「続きをやろう。」
「今度こそ決着だ。」
りょうは力強くうなずく。
「約束だ!」
その横で紗耶は静かに目を閉じた。
──《クローズドクロック》発動。
止まった世界の中で、彼女は古代兵器の胸部へ近づく。
制御核を見つめる。
そして、初めて気づく。
「……これ。」
「壊しちゃ駄目。」
制御核の奥に、小さな人影が眠っていた。
古代文明の少女。
兵器を動かすための"生体中枢"が、今も封印されたままだった。




