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異世界と厨二病  作者: シュレディンガー


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第63話 鋼鉄将軍、本気

銀色の魔力がアイゼンの全身を包む。


鎧だけではない。


皮膚も、筋肉も、骨までも鋼鉄のような輝きを帯びていく。


ガイウスが低くつぶやく。


「鋼化。」


「四天王第二席最大の力じゃ。」


アイゼンは大剣を片手で持ち上げる。


「ここから先は。」


「加減はしない。」


一歩踏み出しただけで、大地にひびが走った。


ドンッ!


その速度は、今までとは比べものにならない。


「速っ!」


りょうが黒耀で受け止める。


ガギィィィン!!


「ぐっ……!」


そのまま十メートル以上吹き飛ばされる。


岩壁に叩きつけられ、土煙が舞った。


「りょう!」


アリシアが回復魔法を飛ばす。


淡い光が傷を塞いでいく。


「まだ戦えます!」


りょうは立ち上がる。


口元の血を拭い、笑った。


「これくらいで倒れるなら、勇者なんて名乗れない!」


アイゼンは感心したようにうなずく。


「その精神力は見事だ。」


「だが。」


「精神だけでは勝てん。」


再び踏み込む。


紗耶はアイゼンの動きを見つめる。


(速い……。)


(でも。)


(見える。)


――《クローズドクロック》発動。


世界が静止する。


止まった時間の中、紗耶はアイゼンの周囲を歩く。


鋼化した肉体。


隙はほとんどない。


それでも。


「……あった。」


肩甲骨の下。


鋼化がわずかに薄い一点。


紗耶はその位置を覚え、時間を動かした。


「りょう!」


「左肩の下!」


りょうは迷わず踏み込む。


「ありがとう!」


黒耀を振り抜く。


「黒影・雷牙斬!!」


ズバァッ!


初めてアイゼンの身体に傷が刻まれる。


鮮血が飛び散った。


アイゼンは傷口を見て、静かに笑う。


「見抜いたか。」


「時間停止で弱点を探したな。」


紗耶は驚く。


「分かるの?」


「傷の位置で分かる。」


アイゼンは大剣を構え直した。


「素晴らしい連携だ。」


「ならば。」


「弱点ごと守ればいい。」


銀色の魔力が流れ、傷口まで鋼鉄に覆われる。


「えっ……。」


弱点が消えた。


ガイウスが目を細める。


「戦いながら進化しおる。」


りょうは汗をぬぐい、笑う。


「敵なのに、成長速度がおかしいだろ!」


アイゼンは珍しく笑みを浮かべた。


「お互い様だ。」


「お前も戦うたびに強くなっている。」


その瞬間。


要塞全体が激しく揺れた。


ゴゴゴゴゴ……。


天井から砂が落ちてくる。


アイゼンが眉をひそめた。


「……何?」


紗耶も魔力の異変を感じ取る。


「この魔力。」


「アイゼンじゃない。」


ガイウスが剣を抜く。


「嫌な予感がする。」


要塞の最奥から、禍々しい紫色の魔法陣が空へ広がっていく。


アイゼンはその光景を見て、初めて表情を曇らせた。


「……ゼルグ。」


「何を始めた。」


四天王第二席であるアイゼンですら知らされていない何かが、鋼鉄要塞の地下で動き始めていた。

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