第62話 鋼鉄将軍の覚悟
ギィィィン!!
黒耀と大剣が激突する。
火花が嵐のように散る。
りょうは歯を食いしばる。
「くっ……!」
アイゼンは一歩も引かない。
「いい一撃だ。」
「だが、まだ浅い。」
紗耶は息を整える。
(時間停止を見破られたわけじゃない。)
(でも、次からは"いつ来るか分からない"と思って戦ってくる。)
以前より使うタイミングが難しくなった。
それでも焦りはない。
「りょう!」
「あと三秒!」
りょうは意味を理解した。
「任せろ!」
アイゼンは二人のやり取りを見て、小さく笑った。
「連携は見事だ。」
「ならば、それごと叩き潰す。」
大剣を地面へ突き立てる。
「鋼鉄要塞。」
ゴゴゴゴゴ……
地面から無数の鋼鉄の柱が生え、戦場が巨大な迷路へと変わる。
アリシアは驚く。
「地形まで変える魔法……!」
ガイウスの表情も険しい。
「厄介じゃ。」
りょうは柱の間を駆ける。
だが。
どこから斬撃が飛んでくるか分からない。
ガギン!!
「ぐっ!」
鎧が裂け、肩から血が流れる。
アイゼンの姿が見えない。
「隠れてる……?」
「違う。」
ガイウスが叫ぶ。
「地形を利用して死角を作っておる!」
その時。
紗耶は静かに目を閉じた。
「……今。」
指は鳴らさない。
詠唱もしない。
世界が止まる。
止まった世界で、紗耶は鋼鉄の柱を見回す。
「あった。」
柱の影。
アイゼンは、時間停止中は動けない。
しかし、その立ち位置から次の一撃は読める。
紗耶はりょうのすぐ横へ行き、小さくささやく。
「時間が動いたら、右後ろ。」
そして元の位置へ戻る。
世界が動き出す。
アイゼンが柱の影から飛び出す。
「終わりだ。」
しかし。
りょうは振り返ることなく黒耀を振るった。
ガキィィィン!!
「なに?」
アイゼンが初めて目を見開く。
完全に読まれていた。
りょうは笑う。
「悪いな。」
「うちには最強の幼馴染がいるんだ。」
紗耶は少し照れながらも笑った。
「……ありがと。」
アイゼンはゆっくり距離を取る。
「なるほど。」
「時間停止は攻撃だけではない。」
「情報戦にも使うか。」
彼は兜を外した。
四十代ほどの男。
短く刈った銀髪。
顔には古い傷跡がいくつも刻まれている。
「勇者。」
「少しだけ、お前を認めよう。」
りょうも黒耀を構え直した。
「嬉しいけど。」
「まだ勝ってない!」
「その通り。」
アイゼンは静かに笑う。
「ならば見せよう。」
「鋼鉄将軍と呼ばれる理由を。」
次の瞬間。
彼の全身を銀色の魔力が包み込む。
鎧だけではない。
肉体そのものが鋼鉄のように硬質化していく。
ガイウスが息をのむ。
「まずい……。」
「それがアイゼンの本気じゃ。」
第二席との戦いは、ここからが本番だった。




