第58話 港町ミレーヌ
海風が吹きつける港町ミレーヌ。
しかし、いつもの活気はなかった。
建物は壊れ、港では炎が上がっている。
「逃げろー!」
「魔物だ!」
悲鳴が響く。
りょうたちが町へ飛び込む。
「紗耶!」
「住民の避難を!」
「分かった!」
「アリシア!」
「怪我人を!」
「はい!」
「ガイウスさん!」
「儂は魔物を足止めする。」
四人は一斉に動き出した。
りょうは黒耀を抜く。
黒マントを翻し、大きく叫ぶ。
「聞けぇぇぇ!!」
逃げる町の人たちが振り返る。
「我が名は!」
「漆黒の覇王・神崎りょう!!」
「必ずこの町を守る!」
子どもが母親の手を握る。
「あの人が勇者?」
母親は頷いた。
「大丈夫。」
「きっと助けてくれる。」
「ギャアアア!」
魚のような姿をした魔物が飛びかかる。
「黒影連斬!!」
ズバッ!
一撃で倒す。
以前より剣が軽い。
ガイウスの修行の成果だった。
その頃。
紗耶は風魔法で瓦礫をどかし、人々を助け出す。
「こっちです!」
アリシアは次々と回復魔法をかける。
「ホーリー・ヒール!」
倒れていた老人が目を開けた。
「ありがとう……。」
しかし。
突然、海が大きく揺れた。
ゴゴゴゴゴ……
港の沖から巨大な影が現れる。
高さ十メートルを超える青い魔物。
巨大な三叉槍を持ち、赤い目が光る。
冒険者が青ざめる。
「あれは……!」
「海将デュラス!」
その男は笑った。
「勇者か。」
「噂ほど強そうには見えんな。」
りょうは剣を向ける。
「お前が黒幕か!」
「その通り。」
デュラスは肩を回す。
「俺は魔王軍幹部。」
「四天王には及ばんが。」
「この程度の町なら一人で沈められる。」
海に槍を突き刺す。
巨大な津波が立ち上がる。
町へ向かって一直線。
「まずい!」
紗耶が指を鳴らす。
パチン。
「クローズド・クロック。」
時間が止まる。
しかし。
津波は完全には止まらない。
ゆっくりと、それでも前へ進んでいる。
「そんな……!」
紗耶は息をのむ。
「水の量が多すぎる……!」
ガイウスが叫ぶ。
「りょう!」
「津波を止めろとは言わん!」
「進路を変えろ!」
りょうは黒耀を握り締めた。
「進路を……!」
目の前には、町を飲み込もうとする巨大な波。
そして、その向こうで不敵に笑う海将デュラス。
「できるものなら、やってみろ。」
りょうは深く息を吸う。
黒耀が淡く光り始める。
「みんな!」
「力を貸してくれ!」
紗耶とアリシアが同時に頷く。
《共鳴》が発動する。
三人の力が一つになり、黒耀へと集まっていく。
港町を守るための、これまでで最大の一撃が放たれようとしていた。




