第57話 四天王、動く
雪山から戻った数日後。
アルカディアは再び穏やかな日常を取り戻していた。
りょうは朝から訓練場で木刀を振る。
「はっ!」
「せいっ!」
ガイウスが頷く。
「黒耀に頼るな。」
「普段の剣が強くなってこそ、黒耀も真価を発揮する。」
「はい!」
一方、紗耶は学院の図書館で魔導書を読んでいた。
最近は時間魔法だけではなく、結界魔法や空間魔法にも興味を持ち始めている。
学院長が言う。
「時間と空間は深く関わっておる。」
「学んで損はない。」
紗耶は静かに頷いた。
その頃――
魔王城。
四天王が玉座の間に集められていた。
第一席・炎獄将軍バルガス。
第二席・鋼鉄将軍アイゼン。
第三席・幻影卿ノクス。
第四席・大魔道士ゼルグ。
魔王は静かに立ち上がる。
「勇者は黒耀の第一解放を果たした。」
「これ以上、好きに成長させるわけにはいかぬ。」
四天王たちは黙って聞いている。
魔王はアイゼンを見る。
「第二席。」
「はっ。」
「勇者を討て。」
アイゼンは静かに答える。
「承知しました。」
すると、バルガスが豪快に笑った。
「待て待て!」
「まだ早ぇだろ!」
「勇者はもっと強くなってから叩き潰した方が面白ぇ!」
ノクスも静かに口を開く。
「私も賛成です。」
「未完成の勇者では、《共鳴》の本質を見ることができません。」
ゼルグも笑う。
「紗耶の魔法も、まだ伸びる。」
魔王は四人を見回した。
「……変わった四天王だ。」
「勇者を育てたいのか。」
バルガスは腕を組む。
「違ぇ。」
「最高の状態で勝ちてぇだけだ。」
アイゼンも短く言う。
「同感です。」
魔王は小さく笑った。
「ならば。」
「しばらくは見守れ。」
「ただし。」
その目が鋭くなる。
「人間の国を滅ぼす計画は止めぬ。」
「勇者には、それを止めてもらう。」
四天王は一斉に頭を下げた。
「御意。」
数日後。
アルカディアのギルド。
受付嬢が慌てて駆け寄ってくる。
「緊急依頼です!」
「東の港町ミレーヌが魔物の大群に襲われています!」
りょうはすぐに立ち上がった。
「行こう!」
ガイウスが地図を見る。
「……妙じゃな。」
「ただの魔物の群れではない。」
紗耶も魔力の流れを感じ取る。
「誰かが操ってる。」
アリシアが不安そうに言う。
「四天王でしょうか……。」
りょうは黒耀を腰に差し、黒マントを翻した。
「聞けぇぇぇ!!」
ギルド中の視線が集まる。
「我が名は!」
「漆黒の覇王・神崎りょう!!」
「港町を守りに行く!」
すると、ギルドにいた冒険者たちも立ち上がった。
「俺たちも行く!」
「勇者だけに任せられるか!」
「港町を守るぞ!」
りょうは少し驚き、そして笑った。
「ありがとう。」
「みんなで行こう!」
こうして、勇者一行と冒険者たちは港町ミレーヌへ向かう。
しかし彼らはまだ知らない。
港を襲う魔物たちの背後には、四天王ではなく、魔王軍幹部の一人が待ち構えていることを。四天王に届く前に越えるべき、新たな強敵との戦いが始まろうとしていた。




