第54話 漆黒の覇王と学園生活
アルカディアでの生活は、一か月目に入っていた。
朝。
ガイウスとの剣術修行。
昼。
ギルドのクエスト。
夜。
紗耶は魔法学院で勉強。
アリシアは回復魔法や結界魔法を学ぶ。
りょうは黒耀を振り続ける。
ある日。
学院長が言った。
「今日は実技試験じゃ。」
広い闘技場には、多くの生徒が集まっていた。
「今年の首席候補、紗耶の試合だ。」
「勇者も来てるぞ!」
ざわめきが広がる。
紗耶の相手は学院でも有名な優等生。
炎魔法の使い手、レオン。
レオンは自信満々に笑う。
「君が時間魔法の使い手か。」
「よろしく。」
紗耶も礼をする。
「よろしくお願いします。」
「試合開始!」
レオンが炎の槍を放つ。
「フレイムランス!」
紗耶は風魔法で軌道を逸らす。
続けて水魔法。
氷魔法。
相手の攻撃を冷静にさばいていく。
りょうは客席から叫ぶ。
「紗耶ー!」
「頑張れー!」
周りの生徒が笑う。
「あれが勇者か。」
レオンは最後の切り札を放つ。
「爆炎陣!」
巨大な炎が闘技場を覆う。
紗耶は静かに息を吸った。
パチン。
「クローズド・クロック。」
時間が止まる。
誰にも気付かれない静寂の世界。
紗耶は炎を避け、相手の背後へ回る。
そして軽く杖を向けた。
時間が動き出す。
「勝負あり!」
審判が宣言する。
レオンは何が起きたか分からず苦笑した。
「……負けた。」
紗耶は頭を下げる。
「ありがとうございました。」
大きな拍手が起こる。
試合後。
りょうが走ってくる。
「さすが!」
「やっぱり紗耶は最強!」
紗耶は少し照れながら笑う。
「そんなことないよ。」
ガイウスが口を開く。
「いや。」
「現時点では、この四人で一番強いのは紗耶じゃ。」
りょうは苦笑した。
「やっぱりか。」
その夜。
りょうは一人、学院の屋上にいた。
黒耀を見つめる。
「……いつになったら追いつけるんだろうな。」
そこへ紗耶がやって来る。
「また考え込んでる。」
「まあね。」
りょうは空を見上げた。
「昔からそうだった。」
「勉強も運動も、紗耶の方ができた。」
「異世界に来ても。」
「やっぱり追いつけない。」
紗耶は少し黙ってから言った。
「ねぇ。」
「私、りょうに憧れてたんだよ。」
「え?」
「何でも本気で。」
「どんなに負けても立ち上がる。」
「それって、私にはできなかった。」
りょうは驚いた顔をする。
「そうだったの?」
「うん。」
「だから、一緒に異世界へ来られてよかった。」
二人は笑い合う。
その様子を遠くから見ていたガイウスは、小さく微笑んだ。
「嫉妬は悪い感情ではない。」
「乗り越えれば、人を強くする。」
そして翌朝。
学院に一人の使者が駆け込んできた。
「学院長!」
「北の雪山にある古代神殿から救援要請です!」
「探索隊が全滅寸前!」
学院長はすぐに四人を見た。
「りょう。」
「次の実戦じゃ。」
りょうは黒耀を腰に差し、ニヤリと笑う。
黒マントを翻す。
「聞けぇぇぇ!!」
「我が名は!」
「漆黒の覇王・神崎りょう!!」
「困ってる人がいるなら!」
「漆黒の覇王が助けに行く!」




