第53話 黒耀の剣
宝箱の中で静かに輝く黒い剣。
りょうはゆっくりと柄を握った。
すると――
キィィィン……
剣が澄んだ音を響かせた。
まるで持ち主を確かめるように。
「選ばれた……?」
アリシアが小さくつぶやく。
ガイウスは慎重に剣を見つめた。
「いや。」
「剣がお前を認めたんじゃ。」
りょうはゆっくり抜刀する。
漆黒の刀身。
刃には青白い紋様が浮かんでいた。
不思議なことに、禍々しさはない。
むしろ温かさすら感じる。
「かっこいい……。」
思わず見とれるりょう。
紗耶は笑った。
「りょうにぴったりだね。」
ガイウスが剣を受け取り、何度か振ってみる。
「軽い……。」
「それでいて頑丈。」
「これは名のある剣じゃ。」
柄に刻まれた古代文字を読む。
「『黒耀』……。」
「この剣の名じゃ。」
りょうは目を輝かせる。
「黒耀!」
「最高じゃん!」
その時。
黒耀が淡く光る。
りょうの魔力に反応したのだ。
ガイウスは驚く。
「魔力を流してみろ。」
「はい。」
りょうが少しだけ魔力を込める。
すると刀身を黒い光が包む。
「おお……。」
しかし、それ以上は何も起こらない。
ガイウスは頷いた。
「まだ力を引き出せておらん。」
「この剣も、お前と一緒に成長するタイプじゃろう。」
学院へ戻ると、学院長が黒耀を見て立ち上がった。
「まさか……!」
「黒耀が見つかったのか!」
紗耶が尋ねる。
「有名な剣なんですか?」
学院長はゆっくり頷く。
「数百年前。」
「魔王軍と戦った英雄の剣じゃ。」
「長い間、行方不明になっていた。」
りょうは驚いた。
「英雄の……。」
その夜。
りょうは一人、中庭で黒耀を振るう。
以前の剣より手に馴染む。
「相棒。」
「これからよろしくな。」
黒耀は小さく光った。
まるで返事をしたようだった。
少し離れた場所から、紗耶がその様子を見ていた。
「よかったね。」
りょうは照れ笑いする。
「うん。」
「でも。」
「まだ俺には、この剣を使いこなす資格はない気がする。」
紗耶は首を横に振る。
「だから修行するんでしょ?」
「そうだな。」
二人は笑い合った。
その頃、魔王城。
玉座の間。
魔王は水晶に映る黒耀を見つめていた。
「……黒耀か。」
低い声が響く。
四天王たちも黙って聞いている。
魔王はゆっくり立ち上がった。
「英雄の剣が再び目覚めた。」
「ならば。」
「勇者も、いよいよ本物への第一歩を踏み出したということか。」
第一席バルガスは豪快に笑う。
「ハッハッハ!」
「面白ぇ!」
「次に会う時は、もっと楽しませてくれよ、勇者!」
その笑い声は、玉座の間いっぱいに響き渡った。




