第4話 旅の師
翌朝。
王都から離れた街道を歩く二人。
「今日は薬草採取の依頼だね。」
「ゴブリンじゃなくてよかった……。」
りょうは肩を落とした。
戦闘になるたびに紗耶に助けられるのは、正直つらかった。
そのとき。
「おーい、若いの。」
道端で荷車がぬかるみにはまっていた。
老人が一人、困っている。
「手伝います!」
りょうはすぐに駆け寄った。
何度も荷車を押す。
泥だらけになりながら、必死に力を込める。
「せーの!」
紗耶も一緒に押すと、ようやく荷車が動いた。
「ありがとう。」
老人は深く頭を下げた。
「礼に昼飯でもごちそうしよう。」
食堂で。
老人は二人の話を聞いていた。
「なるほど。冒険者か。」
「はい!」
「そして君は……火花しか出ない能力、と。」
「はい……。」
りょうは苦笑いした。
「みんなにはハズレ能力って言われます。」
老人は少し笑う。
「能力だけが強さではない。」
「……。」
「君は困っている人を見ると、真っ先に走る。」
「荷車もそうじゃった。」
「戦える紗耶さんではなく、君が最初に動いた。」
りょうは照れくさそうに頭をかく。
「困ってたから。」
老人は満足そうに頷いた。
食後。
老人は一本の木剣を差し出した。
「受け取れ。」
「え?」
「能力が弱いなら、体を鍛えればいい。」
「剣を学べ。」
「足を鍛えろ。」
「考えろ。」
「能力だけに頼る者は、いずれ壁にぶつかる。」
りょうは木剣を握る。
「俺にも……できますか?」
「できる。」
即答だった。
「少なくとも、君は努力を続けられる目をしておる。」
紗耶はその言葉を聞いて、少し安心したように微笑んだ。
「りょう。」
「うん。」
「やってみよう。」
りょうは木剣を強く握りしめる。
「よし!」
「いつか紗耶と肩を並べられるくらい強くなってやる!」
老人はその背中を見送りながら、小さく笑った。
「焦るな、少年。」
「お前の能力が目覚める日は、まだ先だ。」
「だから今は、自分自身を鍛える時じゃ。」
りょうはその言葉の意味をまだ知らない。
だがこの日から、彼は能力に頼らない剣術と体術の修行を始める。




