第40話 幻影卿の罠
ベルフォートまで、あと半日。
街道は穏やかで、青空が広がっていた。
りょうは鼻歌交じりに歩いている。
「ふっふふ~ん。」
黒マントを翻しながら、突然立ち止まった。
「みんな!」
「何か嫌な予感がする!」
紗耶が辺りを見回す。
「……私も。」
ガイウスは静かに剣へ手を添えた。
「気を付けろ。」
その瞬間。
景色が揺らいだ。
青空が黒く染まり、街道が消える。
四人は巨大な石造りの空間に立っていた。
「ここは……?」
アリシアが驚く。
周囲には無数の鏡。
どこを見ても自分たちの姿が映っている。
パチ、パチ、パチ。
拍手が響く。
「ようこそ。」
鏡の向こうから現れたのは、幻影卿ノクス。
「私の『鏡界』へ。」
りょうは剣を抜き、黒マントを翻す。
「待ってました!」
「幻影卿ノクス!」
「今日は逃がさない!」
ノクスは静かに笑う。
「逃げるつもりはありません。」
「今日は、あなた方四人を試す最後の準備です。」
「最後の準備?」
紗耶が眉をひそめる。
ノクスが指を鳴らす。
パチン。
四枚の鏡が光り始めた。
一枚目。
りょうが映る。
二枚目。
紗耶。
三枚目。
アリシア。
四枚目。
ガイウス。
ノクスは静かに告げる。
「この鏡は、心の迷いを映します。」
「誰か一人でも自分を信じられなくなれば。」
「《共鳴》は崩れる。」
りょうは笑った。
「そんな手に引っかかるか!」
「俺たちは仲間だ!」
ノクスは首を横に振る。
「仲間だからこそ、迷うのです。」
その言葉と同時に、鏡が割れた。
ガシャァァン!!
割れた鏡の中から、人影が現れる。
りょうが目を見開く。
「……俺?」
そこにいたのは、自分たちとまったく同じ姿。
だが、その目には冷たい光が宿っていた。
「面白い。」
偽りのりょうが笑う。
「どっちが本物か、試してみよう。」
偽りの紗耶。
偽りのアリシア。
偽りのガイウス。
四人の前に、それぞれの"偽物"が立ちはだかった。
りょうは剣を構え、深く息を吸う。
「聞け!」
紗耶が思わず苦笑する。
「こんな時でも?」
「もちろん!」
りょうは堂々と叫んだ。
「我が名は!」
「漆黒の覇王・神崎りょう!!」
「本物は一人で十分だ!」
偽りのりょうも、まったく同じタイミングで黒マントを翻す。
「我が名は!」
「漆黒の覇王・神崎りょう!!」
「偽物はお前だ。」
二人は同時に駆け出した。
ガキィィィン!!
剣と剣が激しくぶつかり合う。
その戦いを見つめながら、ノクスは静かにつぶやく。
「さあ、見せてください。」
「あなたたちの絆が、本物かどうかを。」




