第34話 黒い火花の正体
バルガスとの決戦から三日。
王国軍は王都へ帰還した。
町の人々は英雄たちを迎え、歓声を上げる。
「ありがとう!」
「助けてくれて!」
りょうは照れくさそうに頭をかく。
「いや、その……。」
紗耶が笑う。
「英雄って呼ばれるの、まだ慣れないね。」
その夜。
王城の一室。
りょう、紗耶、ガイウス、そして国王だけが集まっていた。
国王は静かに口を開く。
「ガイウス。」
「もう話す時ではないか。」
ガイウスはゆっくり頷いた。
「……そうじゃな。」
りょうは身を乗り出す。
「俺の能力のことですか?」
「うむ。」
ガイウスは一冊の古い本を机に置いた。
表紙には古代文字。
「これは王家に伝わる禁書じゃ。」
ページを開く。
そこには、遺跡で見た壁画と同じ戦士が描かれていた。
黒い雷をまとった剣士。
「この英雄の名は、今では失われておる。」
「じゃが。」
「能力だけは記録されていた。」
りょうは息をのむ。
ガイウスは静かに読む。
「その能力の名は――」
《共鳴》
「……共鳴?」
「そうじゃ。」
「お前の能力は、火花ではない。」
「他者の想い、覚悟、願い……。」
「そういった"心"に共鳴して力を引き出す能力じゃ。」
紗耶も驚く。
「だから……。」
ガイウスは続ける。
「紗耶を守ろうとした時。」
「兵士たちを救いたいと願った時。」
「そのたびに黒い火花が現れた。」
「自分のためではなく。」
「誰かのために本気で立ち上がった時だけ。」
りょうは今までを思い返す。
遺跡。
砦。
バルガスとの戦い。
確かに、火花が現れたのはいつもそういう時だった。
「でも。」
りょうは首をかしげる。
「それって……しょぼくないですか?」
部屋が静まり返る。
ガイウスは苦笑した。
「お前らしい質問じゃ。」
紗耶は笑いをこらえている。
「能力名だけ聞くと地味だね。」
「だろ!」
ガイウスは真剣な表情になる。
「じゃが。」
「この能力は完成すれば。」
「仲間が強ければ強いほど、お前も強くなる。」
「そして。」
「仲間の想いを束ね、一人では届かない奇跡を起こす。」
国王が静かに付け加えた。
「だから昔の英雄は。」
「魔王を倒せた。」
りょうはしばらく黙っていた。
やがて立ち上がる。
黒マントを整え、いつものように胸を張る。
「なるほど!」
「つまり!」
「俺は一人で最強になるんじゃない!」
剣を掲げる。
「仲間と一緒に最強になる能力ってことだ!」
ガイウスは満足そうに笑う。
「その解釈でよい。」
紗耶も優しく微笑んだ。
「りょうにぴったりの能力だね。」
その頃、魔王城。
ノクスは静かに窓の外を眺めていた。
「ついに知られてしまいましたか。」
背後から魔王の声が響く。
「ノクス。」
「《共鳴》の勇者は危険だ。」
「ええ。」
ノクスは仮面の奥で微笑む。
「だからこそ。」
「私が育てます。」
魔王は眉をひそめる。
「……育てる?」
「はい。」
「未熟なまま殺すより。」
「完成した《共鳴》を、この目で見てみたい。」
魔王は静かに立ち上がる。
「面白い。」
「ならば好きにしろ。」
こうして、りょうは自分の能力の名を知った。
しかし、その力はまだほんの始まりに過ぎなかった。次に待つのは、魔王軍四天王の中で最も知略に優れた男――幻影卿ノクスとの、本格的な頭脳戦だった。




