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異世界と厨二病  作者: シュレディンガー


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第32話 炎獄将軍バルガス

イグニス渓谷。


灼熱の風が吹き荒れる中、王国軍と魔王軍が激突した。


剣と剣がぶつかり、魔法が空を裂く。


その戦場の中心。


りょうと紗耶は、炎獄将軍バルガスと向かい合っていた。


「来い。」


バルガスは静かに言う。


「今度は本気で相手をしてやる。」


りょうは剣を抜く。


深呼吸を一つ。


そして、いつものように黒マントを翻した。


「聞け!」


紗耶が小さく笑う。


「やっぱりやるんだ。」


「もちろん!」


りょうは剣を天へ掲げる。


「我が名は!」


「漆黒の覇王・神崎りょう!!」


「この剣に誓い!」


「今日こそ貴様を討つ!」


王国軍の兵士たちから歓声が上がる。


「漆黒の覇王!」


「頑張れー!」


以前は笑われていた名乗りが、今では兵士たちの士気を上げていた。


「面白い。」


バルガスは戦斧を構える。


「ならば来い!」


ドォン!!


一瞬で間合いを詰める。


ガキィィン!!


剣と戦斧が激突した。


「ぐっ!」


りょうは踏みとどまる。


以前なら吹き飛ばされていた。


だが、今は耐えられる。


「成長したな。」


バルガスが笑う。


紗耶はすぐに魔法を放つ。


「アイスランス!」


無数の氷槍が飛ぶ。


しかし。


バルガスは炎で蒸発させた。


「甘い!」


巨大な炎が紗耶へ迫る。


「紗耶!」


りょうが飛び込み、剣で炎を受け流す。


紗耶は驚いた。


「助かった……。」


りょうは笑う。


「約束したからな。」


激しい戦いが続く。


しかし、バルガスは圧倒的だった。


王国軍の精鋭たちも次々と倒されていく。


「これが四天王……。」


誰もが絶望しかけた、その時。


バルガスは高く跳び上がった。


「終わりだ!」


戦斧へ、渓谷中の炎が集まる。


「獄炎天壊斬!!」


巨大な炎の柱が、戦場全体へ落ちてくる。


「まずい!」


ガイウスが叫ぶ。


「全員やられる!」


紗耶も青ざめる。


(時間停止じゃ……間に合わない!)


範囲が広すぎる。


救えない。


りょうは燃え盛る空を見上げた。


(守る。)


(みんなを。)


(紗耶を。)


その瞬間。


右手から、黒い火花が弾ける。


パチッ。


一本。


二本。


やがて無数の黒い光が剣へ集まっていく。


ガイウスが息を呑む。


「来るか……!」


しかし、りょう自身には何が起きているのか分からない。


ただ一つだけ。


胸の奥から、声が聞こえた。


「まだだ。」


「お前は、まだ目覚める時ではない。」


黒い光は一瞬だけ強く輝き――


すぐに消えた。


「くそっ……!」


覚醒しない。


まだ足りない。


その瞬間。


紗耶は迷わず指を鳴らした。


パチン。


「クローズド・クロック。」


世界が止まる。


残った魔力をすべて使い、王国軍の兵士たちを安全な場所へ移動させる。


一人。


また一人。


限界を超えて走る。


「はぁ……はぁ……。」


時間停止が解けた瞬間。


ドォォォォォン!!


巨大な炎が渓谷を飲み込んだ。


しかし、兵士たちは救われた。


その代わり――


紗耶はその場に崩れ落ちた。


「……ごめん。」


「もう……魔力がない。」


りょうは紗耶を支える。


バルガスは静かに二人を見つめた。


「見事だ。」


「その覚悟、本物だった。」


だが、その戦斧は再びゆっくりと持ち上がる。


「だからこそ。」


「ここで終わらせる。」


りょうは紗耶をかばうように前へ立つ。


剣を握る手は震えていた。


それでも、一歩も退かない。


そして戦場のはるか遠く。


黒い霧の中から、この戦いを見つめる幻影卿ノクスが小さくつぶやく。


「……ここが運命の分岐点。」


「神崎りょう。」


「君は、この絶望を超えられるかな。」

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