第30話 勇者ランク昇格試験
バルガスが本気で動き出す――。
そんなことを知らないりょうたちは、王都へと到着していた。
今日は冒険者ランクCへの昇格試験の日だった。
ギルドの前には大勢の冒険者が集まっている。
「すごい人だ……。」
紗耶が周りを見渡す。
りょうは黒マントを整え、髪をかき上げる。
「ふっ。」
「ついに俺の実力を世界へ見せる時が来たか。」
紗耶が笑う。
「まずは試験受かろうね。」
試験官が現れる。
屈強な騎士だった。
「これよりCランク昇格試験を始める。」
「試験内容は三つ。」
「筆記試験。」
「実技試験。」
「そして模擬戦。」
りょうは固まった。
「……筆記?」
紗耶が嫌な予感を覚える。
一時間後。
筆記試験終了。
紗耶は余裕の表情。
りょうは机に突っ伏していた。
「終わった……。」
「世界が終わった……。」
紗耶が答案を見る。
「最後の問題、何て書いたの?」
りょうは真顔で答えた。
「『ピンチになったら諦めない』。」
「問題は?」
「解毒草の見分け方。」
「……。」
「気持ちは伝わるけど違うよ。」
実技試験。
巨大な的に剣技を当てる。
りょうは剣を抜く。
「見てろ!」
「黒影連斬!!」
連続で的を斬る。
試験官がうなずく。
「剣の腕は悪くない。」
「合格。」
「よし!」
りょうはガッツポーズ。
紗耶も魔法試験を難なく突破。
時間停止は使わず、風・火・氷魔法だけで高評価を得た。
試験官たちがざわつく。
「あの年齢であの魔法技術か。」
「天才だ。」
りょうは少し悔しそうに笑う。
「やっぱり紗耶はすごいな。」
紗耶は小声で答える。
「でも、一番応援したいのはりょうだよ。」
その一言で、りょうは照れてしまった。
最後は模擬戦。
対戦相手は、同じCランク昇格を目指す冒険者。
大剣使いの青年だった。
「よろしく。」
「よろしく!」
青年は構える。
りょうも黒マントを翻した。
「では!」
「聞け!」
試験官が額を押さえる。
「また名乗るのか……。」
りょうは気にしない。
「我が名は!」
「漆黒の覇王・神崎りょう!!」
「この戦い!」
「全力で楽しませてもらう!」
青年は笑った。
「面白い人だな!」
試合開始!
青年の大剣が振り下ろされる。
ガキン!
りょうは受け流す。
「速い!」
すぐに反撃。
「終焉十字斬!!」
青年は防ぐが、体勢が崩れる。
「今だ!」
りょうは足払いを入れ、大剣を弾き飛ばした。
カラン。
試験官が旗を上げる。
「勝負あり!」
観客から拍手が起こる。
試験終了後。
結果発表。
「神崎りょう。」
「紗耶。」
「両名ともCランク昇格。」
「おめでとう!」
りょうは飛び上がった。
「やったー!」
紗耶とハイタッチする。
「おめでとう!」
「ありがとう!」
ガイウスも満足そうに笑う。
「ようやくCランクじゃな。」
その夜。
王都の酒場では、二人の昇格を祝う小さな宴が開かれた。
だが、その窓の外。
屋根の上に、黒いローブの男が立っていた。
幻影卿ノクス。
「順調に育っていますね。」
「ですが――」
「次の試験は、命を懸けた試験です。」
彼の視線の先には、一通の王国からの緊急依頼。
『四天王・炎獄将軍バルガス討伐作戦』
ついに、逃げることのできない決戦の時が近づいていた。




