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異世界と厨二病  作者: シュレディンガー


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第24話 小さな火花

バルガスの戦斧へ、膨大な炎が集まっていく。


空が赤く染まり、砦の石壁さえ熱でひび割れ始めた。


「受けるがいい!」


「獄炎滅砕斬!!」


巨大な炎の斬撃が二人へ迫る。


兵士たちは叫んだ。


「無理だ!」


「逃げろー!!」


しかし。


りょうは逃げなかった。


紗耶の前へ立つ。


「りょう!」


「約束しただろ。」


「今度は俺が守る。」


紗耶は目を見開いた。


りょうは深く息を吸う。


黒マントを大きく翻す。


「聞け、世界よ!」


「漆黒の覇王は、ここで倒れる運命など認めない!」


剣を天へ掲げる。


「目覚めろ!」


「我が魂に眠る真なる力!」


「――終焉の黒き覇気よ!!」


……。


…………。


何も起きない。


静寂。


兵士たちが固まる。


ガイウスも固まる。


紗耶も一瞬ぽかんとした。


りょうは冷や汗を流した。


「……あれ?」


バルガスは大笑いする。


「ハハハハハ!」


「何も起きておらんではないか!」


「恥ずかしいやつだ!」


紗耶は思わず笑ってしまう。


「ご、ごめん……。」


「今は笑わないで!」


その瞬間。


パチッ。


りょうの指先で、小さな火花が散った。


本当に小さな、本当に弱い火花。


だが。


火花は剣へ移ると、刃全体を淡い黒い光が包んだ。


ガイウスの表情が変わる。


「……!」


「その力は!」


りょう自身も驚いていた。


「え?」


「剣が……軽い。」


体が自然に動く。


炎の斬撃へ向かって駆け出す。


「うおおおお!!」


「黒影一閃!!」


ズバァァァッ!!


炎の斬撃が真っ二つに裂けた。


「なっ!?」


バルガスの目が見開かれる。


兵士たちも息を呑む。


「斬った……。」


「あの炎を?」


だが、代償もあった。


黒い光はすぐに消え、りょうは膝をつく。


「はぁ……はぁ……。」


体中が鉛のように重い。


「りょう!」


紗耶が駆け寄る。


「大丈夫?」


「……なんとか。」


ガイウスは静かに笑った。


「やっと目覚めたか。」


りょうは顔を上げる。


「俺の能力……?」


「まだほんの欠片じゃ。」


「だが間違いない。」


「お前の力が、今初めて応えた。」


バルガスは炎を鎮め、ゆっくりと二人を見た。


そして豪快に笑う。


「ハハハハハ!」


「いい!」


「実にいい!」


「ようやく勇者らしくなってきたではないか!」


戦斧を肩に担ぎ、背を向ける。


「今日はここまでだ。」


兵士たちがざわめく。


「逃げるのか?」


バルガスは振り返らない。


「逃げる?」


「違う。」


「今のお前たちを殺すのは簡単だ。」


「だが、それではつまらん。」


「もっと強くなれ。」


「そして次は――」


ゆっくりとりょうを振り返る。


「その力の正体を見せてみろ。」


炎をまとったまま、バルガスは魔王軍と共に去っていった。


静けさが戻る。


兵士たちは歓声を上げる。


「砦を守った!」


「四天王を退けたぞ!」


紗耶は座り込んだりょうの隣にしゃがむ。


「約束、守ってくれたね。」


りょうは照れくさそうに笑う。


「ああ。」


「でも……。」


「まだ全然足りない。」


右手を見る。


さっきの黒い光はもう消えていた。


それでもガイウスは確信していた。


りょうの"しょぼい能力"は、火花を操る力ではない。


あの黒い輝きは、その能力のほんの入口にすぎなかった。

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