第21章 炎獄将軍、再来
レグナスの事件から二週間。
町の人々を救い、依頼も順調にこなした二人は、再び北へ向かっていた。
その日の昼。
街道を歩いていると、一人の伝令兵が馬を飛ばしてきた。
「大変だ!」
「グランベル砦が再び襲われています!」
りょうと紗耶は顔を見合わせた。
「まさか……。」
兵士は息を切らしながら叫ぶ。
「炎獄将軍バルガスです!」
数時間後。
砦の城壁が見えた。
しかし前回とは違う。
黒煙が上がり、あちこちが崩れている。
「遅かったか……。」
ガイウスが険しい表情になる。
魔物の大軍は前回よりもさらに多い。
兵士たちは必死に戦っていた。
その中央には、巨大な戦斧を肩に担ぐ男。
「ハハハハハ!」
炎獄将軍バルガス。
第一の四天王だった。
「人間ども!」
「前回は楽しませてもらった!」
「今日は砦ごと叩き潰してくれる!」
戦斧を振るう。
ドォォォン!!
城壁の一角が吹き飛んだ。
兵士たちが吹き飛ばされる。
「強すぎる……。」
りょうは剣を抜く。
「紗耶。」
「うん。」
「今回は俺も前に出る。」
紗耶は少し心配そうに見つめた。
「無理はしないで。」
「約束する。」
りょうは一歩前へ。
黒マントを大きく翻した。
戦場中の視線が集まる。
ガイウスは苦笑する。
「また始まったか。」
りょうは剣を天へ掲げる。
「聞け!」
「魔王軍四天王!」
バルガスがゆっくり振り向く。
「……?」
「我が名は!」
「漆黒の覇王・神崎りょう!!」
「今日こそ貴様を討ち滅ぼし!」
「世界に平和をもたらす者だ!」
兵士たちはざわつく。
「誰だ?」
「あの黒マント。」
「また名乗ってる。」
紗耶は小さく笑う。
「りょうらしい。」
バルガスは数秒黙ったあと――
豪快に笑い始めた。
「ハハハハハ!」
「貴様!」
「前回、小娘の後ろで転がっていた小僧ではないか!」
兵士たちがりょうを見る。
「えっ。」
りょうの顔が赤くなる。
「それを言うな!」
バルガスは腹を抱えて笑う。
「面白い!」
「よかろう!」
巨大な戦斧を構えた。
「まずは貴様から叩き潰す!」
地面を砕きながら突進してくる。
りょうは剣を握り直す。
(怖い。)
(でも。)
(前みたいには逃げない。)
「来い!」
「黒影連斬!!」
剣が閃く。
ガキィン!!
今度は弾き飛ばされなかった。
踏ん張り、なんとか受け止める。
「ほう?」
バルガスの目が細くなる。
「前よりは強くなったか。」
りょうは歯を食いしばる。
腕がしびれる。
それでも、立っていた。
その姿を見た紗耶は静かに剣を抜く。
「りょう。」
「今度は二人で。」
「ああ。」
二人は並んでバルガスを見据える。
前回は「守る者」と「守られる者」だった。
だが今は違う。
まだ力の差は大きい。
それでも、りょうはようやく――
紗耶の隣に立って戦える場所まで、少しだけ近づいていた。




