第20話 黒き儀式
「侵入者を始末しろ!」
黒ローブたちが一斉に襲いかかる。
十人以上。
全員が短剣や杖を手にしていた。
「ふっ……。」
りょうは剣を肩に担ぎ、口元をつり上げる。
「闇に生きる愚か者ども!」
黒マントを大きく翻し、右手を前へ突き出す。
「貴様らに名乗ってやろう!」
紗耶が小さくつぶやく。
「ちゃんと名乗るんだ……。」
「我が名は!」
「漆黒の覇王・神崎りょう!」
「深淵より帰還せし終焉の使徒!」
「我が前に立つなら、その覚悟を見せろ!」
黒ローブたちは顔を見合わせた。
「何を言ってる?」
「分からん!」
「とにかくやれ!」
「来い!」
りょうは剣を構える。
「黒影連斬!!」
ズバッ!
最初の一人の杖を弾き飛ばす。
「まだまだ!」
二人目へ踏み込む。
「終焉十字斬!!」
クロスに剣を振るい、短剣を持つ男を倒す。
「ぐあっ!」
ガイウスは感心していた。
(技名は派手じゃが、剣の腕は確実に上がっとる。)
その頃、紗耶は後衛にいた魔導師たちを相手にしていた。
「火球!」
炎の魔法が飛ぶ。
紗耶は風魔法で軌道を逸らし、剣で間合いを詰める。
一人。
二人。
次々と無力化していく。
まだ時間停止は使わない。
使うほどの相手ではないと判断した。
しかし。
儀式の中心にいた男が笑った。
「ククク……。」
フードを脱ぐ。
灰色の肌。
赤い瞳。
魔族だった。
「人間ごときが。」
男は杖を地面へ突き立てる。
黒い魔法陣が輝いた。
「出でよ。」
地面から黒い泥が盛り上がる。
「ゴオオオ!」
巨大な泥人形。
三メートルはある。
「シャドウゴーレムだ!」
ガイウスが叫ぶ。
「普通の武器では倒せん!」
「俺がやる!」
りょうは飛び出した。
「待って!」
紗耶が叫ぶ。
しかし、りょうは止まらない。
「喰らえ!」
「黒炎閃!!」
剣がゴーレムを斬る。
だが。
ズブッ。
泥の体がすぐ元に戻る。
「効いてない!」
ゴーレムの拳が振り下ろされる。
ドゴォン!
りょうは横へ飛んでかわす。
「危ねぇ!」
魔族は笑う。
「無駄だ。」
「物理攻撃は通用せぬ。」
紗耶は魔法を放つ。
「氷槍!」
氷が泥を凍らせる。
動きが少し鈍くなる。
「りょう!」
「今!」
りょうは頷く。
「了解!」
全力で駆ける。
「黒影連斬・改!!」
凍った腕へ連続で斬りつける。
パキン!
腕が砕けた。
「よし!」
魔族の笑みが消える。
「……ほう。」
だが、ゴーレムは再生を始める。
紗耶は小さく息をついた。
「やっぱり。」
「時間停止を使う。」
りょうは一瞬だけ迷った。
切り札を使わせてしまう。
悔しかった。
それでも今は勝つことが優先だ。
「頼む!」
紗耶は静かに指を鳴らした。
パチン。
「クローズド・クロック。」
世界が止まる。
止まった時間の中、紗耶は魔法陣の中心へ駆け寄る。
「これが……儀式の核。」
床に埋め込まれた黒い水晶。
「これを壊せば。」
剣を振り下ろす。
パリン――。
水晶が砕けた。
時間が動き出す。
次の瞬間。
シャドウゴーレムは全身にひびが入り、黒い泥となって崩れ落ちた。
「なっ……!」
魔族は目を見開く。
何が起きたのか理解できない。
それは当然だった。
世界で時間停止を知る者は、ごくわずかしかいないのだから。
りょうは剣を構え直し、不敵に笑う。
「どうした?」
「もう終わりか?」
そして、黒マントを翻した。
「覚えておけ!」
「漆黒の覇王を敵に回したことをな!」
その隣で紗耶は、少しだけ照れながら小さく笑った。
「……その決めぜりふ、嫌いじゃないよ。」




