第14話 霧の街道
商隊を護衛しながら霧の街道を進む一行。
突然、霧の中から魔物が飛び出した。
「シャァァ!」
「敵襲!」
商人たちが悲鳴を上げる。
その瞬間、りょうが一歩前へ出る。
黒いマントを翻し(本人が町で買ったお気に入り)、剣を天へ掲げた。
「聞くがいい!」
冒険者たちが振り向く。
(始まった……。)
紗耶は額に手を当てる。
りょうは胸を張り、大声で叫ぶ。
「我が名は――漆黒の覇王、神崎りょう!」
「深淵より生まれし業火をその身に刻め!」
「喰らえ!」
剣を振る。
「黒炎閃!!」
ズバッ!
……普通の剣技だった。
魔物は倒れた。
周囲は静まり返る。
冒険者が小声で言う。
「技名はすごかったな。」
「うん。」
「普通の斬撃だった。」
りょうは咳払いする。
「ふっ……名前は大事なんだ。」
紗耶は苦笑した。
「うん、大事だね。」
「棒読み!」
さらに魔物が現れる。
りょうは指を突きつける。
「終焉の火よ!」
パチッ。
小さな火花が飛ぶ。
「ダーク・スパーク!!」
火花は魔物の鼻先で弾けた。
魔物は一瞬だけ驚く。
「今だ!」
紗耶が飛び込み、剣で倒した。
「ナイス援護。」
「援護になってた?」
「……少しだけ。」
「よし!」
りょうはなぜか嬉しそうだった。
戦闘後。
商人が笑う。
「君、面白いね。」
「面白くない!」
りょうは真剣な顔で言う。
「これは漆黒の戦士としての儀式です。」
「そうなんだ。」
紗耶はくすっと笑う。
「でも、私は嫌いじゃないよ。」
りょうは少し照れながら笑った。
「だろ?」
「異世界なんだから、こういうのはロマンだ!」
ガイウスは肩をすくめる。
「……まあ、気合いが入るならよしとするか。」
こうして旅は続く。
最強の幼馴染と、技名だけは誰よりも最強な少年。
その名乗りは、やがて旅先の人々にも知られるようになっていく。




