第12話 緊急依頼 ― 東の村を守れ
「東の村が襲われている!」
血だらけの冒険者の叫びで、ギルド中が静まり返った。
受付嬢はすぐに鐘を鳴らす。
カラン、カラン――。
「緊急依頼です! 戦闘可能な冒険者は至急集まってください!」
酒場にいた冒険者たちも立ち上がる。
「行くぞ!」
「子どもたちを守れ!」
りょうも剣を握った。
「俺たちも行こう!」
紗耶は力強く頷く。
東の村。
到着した時には、村の外れで魔物たちが暴れていた。
ゴブリン。
コボルト。
そして大きなオーガが一体。
「村人は避難を!」
騎士団が叫ぶ。
りょうは走り出した。
「紗耶!」
「私はオーガを!」
「俺は村の中を!」
「うん!」
二人は別れて行動する。
村の中。
一軒の家から泣き声が聞こえた。
「誰か……!」
りょうが扉を開ける。
小さな女の子が家具の陰に隠れていた。
「お兄ちゃん……。」
「大丈夫!」
りょうは笑顔を見せる。
「迎えに来た!」
その瞬間。
窓を破ってゴブリンが飛び込んできた。
「ギャア!」
りょうは剣を構える。
ガイウスとの修行を思い出す。
(慌てるな。)
(相手を見ろ。)
ゴブリンが棍棒を振る。
ひらりとかわし、足を払う。
体勢を崩したところへ、一撃。
ゴブリンは倒れた。
「よし!」
女の子を抱き上げる。
「行こう!」
一方その頃。
紗耶はオーガと対峙していた。
巨大な棍棒が振り下ろされる。
パチン。
「クローズド・クロック。」
世界が静止する。
誰にも知られない数秒間。
紗耶はオーガの背後へ回り込み、剣と風魔法を組み合わせて急所を狙う。
時間が動き出す。
ドォン!
オーガは何が起きたか分からないまま倒れた。
騎士たちは驚く。
「また一瞬で……。」
「何をしたんだ?」
誰にも分からない。
村の中央広場。
避難はほぼ完了した。
だが、一人の老人が叫ぶ。
「まだ孫が!」
「納屋の中なんだ!」
りょうは振り返る。
燃え始めた納屋。
「俺が行きます!」
「待て!」
騎士が止める。
「危険すぎる!」
しかし、りょうはもう走り出していた。
(助けられる命なら、助けたい。)
炎の中へ飛び込み、小さな男の子を見つける。
「いた!」
抱きかかえた、その時。
天井の梁が音を立てて崩れ始めた。
「しまっ――」
次の瞬間。
紗耶が現れる。
もちろん誰にも見えない時間停止の中で。
「りょう。」
「え?」
時間が止まった世界で動けるのは二人だけ。
「また無茶したね。」
紗耶は少し困ったように笑う。
「ごめん。」
「でも、助けたかった。」
紗耶は小さく息をつく。
「知ってる。」
二人は男の子を抱えて外へ出る。
パチン。
時間が動き出す。
ドォォン!
納屋は完全に崩れ落ちた。
村人たちは目を見開く。
「助かった……!」
「いつの間に!」
誰にも真実は分からない。
ただ、子どもたちは無事だった。
依頼達成後。
村人たちは二人に感謝した。
「ありがとう!」
「命の恩人です!」
りょうは照れくさそうに頭をかく。
紗耶はその様子を見て、優しく微笑んだ。
ガイウスは二人を見つめながら呟く。
「戦うだけが勇者ではない。」
「人を救うために危険へ飛び込める。」
「それがお前たちの強さじゃ。」
そして遠く離れた魔王城では、一人の仮面の魔族が報告書を読んでいた。
「ほう……。」
「『見えない剣姫』と、その幼馴染か。」
仮面の奥で口元がわずかに歪む。
「少しだけ、興味が湧いた。」
四天王第三席――幻影卿ノクス。
彼は静かに、二人の名を覚えた。




